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さん付けで呼びたいアニメキャラ 238 :水先案名無い人:2014/11/22(土) 02 47 20.44 ID 7IK2HGGH0 アナ「徳川ァァ!」 徳川「さんをつけろよ眼鏡野郎」 全さん付けで呼びたいアニメキャラ入場!! オシャレ殺しは生きていた!! 更なる研鑚を積みメタルモンスターが甦った!!! 邪神!! クラウザーさんだァ――――!!! 解説役はすでに我々が完成している!! 歩く萌え要素みゆきさんだァ――――!!! 挫折しだい蘇ってやる!! 遊戯王代表 万丈目サンダァッー!!! 猫の被り合いならアマガミの歴史がものを言う!! 仮面の優等生 ウラオモテナイヤー 絢辻さん!!! 真の手刀を知らしめたい!! 稲妻十字空烈刃 ダイアーさんだァ!!! ネルフでは三重スパイだが葛城なら全時代オレのものだ!! 大人の関係 加持さんだ!!! 転倒対策は完璧だ!! 宝寿司職人 梅さん!!!! 全少年漫画のベスト・マスターは私の中にある!! ドラゴンボールの神様が来たッ ピッコロさん!!! タイマンなら絶対に敗けん!! 英国淑女の戦車道見せたる 戦車長 ダージリンさんだ!!! さいしょはROCK…(なんでもあり)ならこいつが怖い!! くじら島のピュア・ハンター ゴンさんだ!!! ネオヴェネツィアから白い妖精が上陸だ!! あらあらうふふ アリシアさん!!! えっちの無い教育がしたいからメイド(用心棒)になったのだ!! アンドロイドのケンカを見せてやる!!まほろさん!!! めい土の土産に愛してあげるとはよく言ったもの!! お嬢さんの狂気が今 実戦でバクハツする!! 富野流悪女 カテジナさんだ―――!!! 「光速」の異名を持ち重力を自在に操る高貴なる女性騎士こそが地上最強の代名詞だ!! まさかこの女がきてくれるとはッッ ライトニングさん!!! 冷やしたいからここまでしたッ 出力一切不明!!!! 管理局の白い(ヒロイン)悪魔 なのはさんだ!!! ワタシたちはメイド最強ではない女執事で最強なのだ!! 御存知ハイジ ロッテンマイヤーさん!!! ヒーローの本場は今や溝の口にある!! オレを驚かせる怪人はいないのか!! レッドさんだ!!! デカァァァァァいッ説明不要!! 91cm!!! 48kg!!! あずささんだ!!! 料理は実戦で使えてナンボのモン!!! 超実戦狩人!! 葉鍵板から千鶴さんの登場だ!!! ひげ部はオレのもの 邪魔するやつは思いきりエっちゃんし思いきり放キャンするだけ!! セクシーコマンドー統一王者 マサルさん 自分を試しに一刻館へきたッ!! ラブコメ全焼きもちチャンプ 管理人さん!!! フルスイングに更なる磨きをかけ ”無能力者”佐天さんが帰ってきたァ!!! 今の自分に存在感はないッッ!! エア・ヒロイン インなんとかさん!!! スキル一京二千兆のインフレが今ベールを脱ぐ!! 悪平等から 安心院さんだ!!! ラーメンの前でならオレはいつでも全盛期だ!! 燃える下宿人 鈴木さん 本名で登場だ!!! 医者の仕事はどーしたッ ブラコンの炎 未だ消えずッ!! 叩くもおだてるも思いのまま!! セイラさんだ!!! 特に理由はないッ お巡りさんが強いのは当たりまえ!! 部長にはないしょだ!!! 新葛飾警察署地域課! 両さんがきてくれた―――!!! 歓楽街で磨いた実戦お誘い!! 海山商事のデンジャラス・フレンド アナゴさんだ!!! 眼鏡ならこの人を外せない!! 超A級浪人生 勉三さんだ!!! 超一流ファンシーの超一流の発明だ!! かなで読んでオドロキやがれッ 遠未来の新人類!! 妖精さん!!! 三話視聴はこの女が完成させた!! 魔法少女の切り札!! マミさんだ!!! 懐かしい元ネタが帰ってきたッ どこへ行っていたンだッ 健康優良不良少年ッッ 俺達は君を待っていたッッッ金田正太郎の登場だ――――――――ッ 加えて負傷者発生に備え豪華なリザーバーを4名御用意致しました! ナイトメア ブンビーさん!! 伝統派幽霊 花子さん!! ぬいぐるみのロボット! ベアッガイさん! ……ッッ どーやらもう一名はいえのなかをぐるぐるまわってる様ですが、到着次第ッ皆様にご紹介致しますッッ 関連レス 242 :水先案名無い人:2014/11/22(土) 08 04 33.59 ID a0xbYZb40 乙 しかしダージリンはどちらかと言うと『様』で呼びたい気がしないでもないw 243 :水先案名無い人:2014/11/22(土) 08 22 21.24 ID uh4tUyga0 乙 ゲームだったらミストさんとかだな 244 :水先案名無い人:2014/11/22(土) 09 05 35.28 ID YZ2W0G4c0 乙にょろ 245 :水先案名無い人:2014/11/22(土) 15 41 16.59 ID ZZsrwKvJ0 乙 しかし確かにダージリン様はダージリン様だな 田尻さんならありだが 246 :水先案名無い人:2014/11/23(日) 00 21 23.06 ID MIy/2/qT0 乙さん この中に何人、「○○さんじゅうななさい(じゅうきゅうさい)(女性限定)」がいるんだろう 解説役はすでに我々が完成している!! 歩く萌え要素みゆきさんだァ――――!!! ひでぇ・・・ メガネかッ!?メガネだからかッ!? 料理は実戦で使えてナンボのモン!!! 超実戦狩人!! 葉鍵板から千鶴さんの登場だ!!! 志村~! 後ろ!後ろ! ・・・おや誰だろうこんな時間n コメント 名前
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453 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/08/03(日) 19 21 31.79 ID mXbjSMc50 お助けNPCなら最近、すごいの食らったな… 世界観だけオリジナルにして、さらに各PLがオリジナルの世界を自由作って、それらを行き来するっていう世界観でキャンペやってたんだ それぞれの世界には各PCの敵とかがいて、味方は味方、敵は敵で同盟結んだりして 話も終盤そろそろ各PCが敵倒す頃だよねって時に事件は起こった オープニング、しかもマスターシーンでとあるアニメの敵キャラが突然異世界から現れて、Aの敵だったキャラ瞬殺 その敵と敵対関係だったA呆然(PC視点ではまだ知らないから、その後のロールも戸惑ってた) その後、そのアニメの主役キャラが出てきて仲間に加わって、ボスはオープニングに出てきたその敵キャラ 当然ならボスに因縁あるのはそのアニメキャラな上、そのステータス自体がアニメ再現専用スキルまで持って、他のプレイヤーよりも一回り強くて完全に無双状態 みんなテンション下がりつつも、なんとか終わらせたが、終わった後に当然そのGMに文句が出た オリジナル世界観にアニメの世界観混ぜられたのがキツイ 完全に主役がアニメキャラになっててこっちのPCいらない話だったよね Aの本来の敵をあんな形でキャンペから退場させるのは酷すぎると GMの主張は最近、メンバーの雑談の時にそのアニメの話をすること多かったから、みんな楽しめると思ったのと、衝撃的な展開を考えた結果こうなったらしい。 設定的に異世界からの行き来は大丈夫だから、設定的にも問題ないだろうと本気で思ってた 最終的にはGMも反省と謝罪があったのと、この話自体を全てなかったことにして、無事収まったから致命傷にはならないですんだけどな 454 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/08/03(日) 20 10 27.28 ID Rh4ZysOG0 [3/4] 453 擦れ違いと言うか勘違いと言うか、まあ事故だろうなあ セッション1回分の時間浪費については、気の毒としか言えんが 455 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/08/03(日) 20 16 07.14 ID PaIdJxZ20 まぁ、下手とか事故とかの類いだね。 どっかにシナリオの作り方を物語構造から入って、 TRPGに向かない物語構造の除外の仕方とその乗り越え方、 ゲームとしての盛り込み方を纏めた本とか無いのかしら。 459 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/08/03(日) 20 35 46.34 ID Ro8WwQGD0 [2/3] 455 山北篤がもろに「RPGゲームマスター大全」というのを出してた 桐生茂の「RPGシナリオメイキングガイド」も昔お世話になった どちらもずいぶん昔の本だから、今読んで参考になるかは知らない 461 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/08/03(日) 20 50 00.36 ID sNrlCo0P0 [4/6] 459 古典名著だと思うな、山北のあれ 462 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/08/03(日) 20 54 24.59 ID Rh4ZysOG0 [4/4] それっぽいのあったと思って本棚を探してみたら、 SNEの「実践!RPGゲームマスター道」と言う本が出てきた 読んだの昔過ぎて、内容全然覚えてねえ… 463 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/08/03(日) 21 12 10.06 ID sNrlCo0P0 [5/6] 462 それはダメなやつだった気が スレ391
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第4回アニメキャラ王決定戦 第1部 説明文 ランキングのエントリー一覧 第4回アニメキャラ王決定戦 第1部 作成者:リボン付きの鬼神 総投票:19742票 期間:2013/03/31~2013/04/07 説明文 今回は1部のみの決戦です。2部・3部は次回開催で、前回予選敗退者と前回まで未出場キャラや最新アニメで構成した予選を開催します。 下位10作品は第2部に降格します。 ランキングのエントリー一覧 1位 秋山澪(けいおん!):前回王者 688票 2位 暁美ほむら(魔法少女まどか☆マギカ):前回11位 587票 3位 鏑木・T・虎徹(ワイルドタイガー)(TIGER&BUNNY):前回2位 582票 4位 バーナビー・ブルックスJr.(TIGER&BUNNY):前回3位 555票 5位 沖田紗羽(TARI TARI):前回14位 520票 6位 巴マミ(魔法少女まどか☆マギカ):前回12位 497票 7位 如月千早(THE IDOLM@STER):前回44位 491票 8位 キリト(ソードアート・オンライン):前回16位 483票 9位 羽瀬川小鳩(僕は友達が少ない):前回32位 476票 10位 桂ヒナギク(ハヤテのごとく!):前回25位 467票 11位 中野梓(けいおん!):前回13位 456票 12位 ミルヒオーレ・F・ビスコッティ(DOG DAYS):前回35位 409票 13位 貴月イチカ(あの夏で待ってる):前回34位 407票 14位 長門有希(涼宮ハルヒの憂鬱):前回17位 398票 15位 アンパンマン(それいけ!アンパンマン):前回18位 397票 ペリーヌ・クロステルマン(ストライクウィッチーズ2):前回26位 397票 17位 沙羅(ジュエルペット てぃんくる☆):前回27位 395票 18位 千反田える(氷菓):前回6位 393票 19位 天使(Angel Beats!):前回8位 390票 坂田銀時(銀魂):前回15位 390票 21位 東雲皐月(恋と選挙とチョコレート):前回45位 387票 22位 ルルーシュ・ランペルージ(コードギアス 反逆のルルーシュR2):前回29位 382票 23位 ラクス・クライン(機動戦士ガンダムSEED):前回8位 381票 羽川翼(化物語):前回31位 リン・ミンメイ(超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか):前回39位 26位 シリカ(ソードアート・オンライン):前回19位 380票 新垣あやせ(俺の妹がこんなに可愛いわけがない):前回20位 斎藤一(薄桜鬼):前回21位 竹中半兵衛(織田信奈の野望):前回22位 一方通行(アクセラレータ)(とある魔術の禁書目録II):前回23位 星井美希(THE iDOLM@STER):前回42位 葵・トーリ(境界線上のホライゾン):前回47位 33位 シェリル・ノーム(マクロスF(フロンティア)):前回7位 379票 フランチェスカ・ルッキーニ(ストライクウィッチーズ2):前回10位 サチ(ソードアート・オンライン):前回37位 森園立夏(D.C.III ~ダ・カーポIII~):前回47位 37位 柏崎星奈(僕は友達が少ない):前回5位 378票 葛木姫乃(D.C.III ~ダ・カーポIII~):前回47位 39位 ユイ(ソードアート・オンライン):前回4位 377票 40位 田村麻奈実(俺の妹がこんなに可愛いわけがない):前回36位 366票 これより下2部に降格 41位 上条当麻(とある魔術の禁書目録):前回41位 315票 42位 森島はるか(アマガミSS):前回37位 313票 43位 七海春歌(うたの☆プリンスさまっ♪マジLOVE1000%):前回24位 310票 44位 赤沢泉美(Another):前回28位 304票 45位 星矢(聖闘士星矢):前回30位 297票 46位 シャルロット・デュノア(IS〈インフィニット・ストラトス〉):前回39位 292票 47位 マドレーヌ(ファンタジスタドール):前回43位 258票 48位 野々原ゆずこ(ゆゆ式):前回46位 257票 49位 真鍋和(けいおん!):前回33位 249票 50位 鷲岡至(まじかるすいーと プリズム・ナナ):前回50位 182票
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100 正義執行 ◆BEQBTq4Ltk 由比ヶ浜結衣を襲って来た男は無残にも死んだ。 誰が殺したかは明白であり、その場に居た由比ヶ浜結衣以外に有り得ない。 正当防衛と云う名の大義名分はあるが、人を殺したことに変わりはない。 その現実を認識した時、由比ヶ浜結衣の視界は全てが腐っているように見えてしまった。 元々由比ヶ浜結衣は殺しとは無関係な女子高生である。 広川が開いたバトル・ロワイアルに巻き込まれた哀れな参加者。 事の元凶は広川である。しかし浦上を殺したのは由比ヶ浜結衣だ。 警察が助けてくれるかもしれない。けれど、私は人を殺した。 殺しを行っても開放感に満ちることは無く、胸が苦しくなり、やがて錯乱する。 次に別の男が現れた時には完全に現実から逃げていた。 イヤダ、死にたくない。どうして、こんなことに……。 目に映る殺人者名簿がこれから自分を殺しに来る死神にしか見えなかった。 助けて。 比企谷八幡でも、雪ノ下雪乃でも、戸塚でもいい。 誰でもいいから、自分を救ってもらいたかった。 そして彼女は出会ってしまった。 正義を盲信するセリュー・ユビキタスに。 殺人者名簿に載っていた彼女に対し由比ヶ浜結衣は生きるために殺しに掛かる。 しかし結果は返り討ちに在ってしまい、己の生命を危険に晒すことになった。 殺し合いに巻きこれている時点で危険も安全も無いのだが、生憎そこまで頭が回る程冷静ではない。 死にたくない一心でセリューの質問に答えていた。 歯向かえば殺される、機嫌を損ねれば殺されてしまう、と。 錯乱状態でありながらも出来るだけ、ほんの少し出来るだけ頭を回転させる。 するとセリューの興味は殺人者名簿へと移ることになる。 事実を説明した結果、神が慈悲を与えてくれたのかその場で殺される結末を回避。 セリューは自分にある程度の共感を示すにまで至ったのだ。 由比ヶ浜結衣は引き金を引かずに、セリューと共に歩み道を選択した。 極限にまで磨り減った精神。どんな形でも支えになってくれる存在と離れたくない。 死を覚悟していた由比ヶ浜結衣に訪れたのは正義の味方だった。 しかしセリュー・ユビキタスの行き過ぎた正義理論に理解は示せなかった。 悪を許してはならないかもしれない。 けれど悪だからと云って全てを皆殺しにすることが許されていい筈がない。 悪と認識されたら自分も殺されてしまう。 無意識に由比ヶ浜結衣はセリュー・ユビキタスの顔色を伺うようになっていた。 こうして奇跡的に生命を保ち続けている由比ヶ浜結衣に重い現実が襲い掛かる。 比企谷八幡の死は彼女にとって一つの世界が終わるに等しい。 何が起きているか解らなかった。放送を理解したくないと思っていた。 聞こえる広川の声は比企谷八幡の死を知らせる悪魔の囁きで、受け入れたくない。 動揺から足を滑らせた由比ヶ浜結衣の意識は闇の中へと消え去った。 その時比企谷八幡の光もまた、闇の中へと消え去っていた。 目を覚まし島村卯月やロイ・マスタングと云った仲間が増えていた。 帰還したセリュー・ユビキタスは比企谷八幡の死に様を他者から聞き、報告してくれた。 どんな死に方をしたのか。 知りたくない、だけど彼を知りたい。矛盾が心の中で大きな渦を巻く。 セリュー・ユビキタスが語る比企谷八幡の勇姿。 それは由比ヶ浜結衣が知りたかった現実ではなかった。 盾にされた。 切捨てられた。 雪ノ下雪乃もその場に居た。 でも。 比企谷八幡は盾にされて、切捨てられて、死んだ。 何を言われているか解らなかった。 自分は人を殺した。ヒッキーは殺されていた。 何故。どうして。なんでこんなことに。言葉は幾らでも生まれる。 雪ノ下雪乃は何をしていたのか。 ナイトレイドがいたから、それが理由になるのか。 誰が真実を知っている――雪ノ下雪乃だ。 逢いたい。 比企谷八幡に。 彼の真実を知っている雪ノ下雪乃に。 逢って――心の中に溜まった泥をぶち撒けたい。 精神が更に追い込まれている由比ヶ浜結衣に対しセリューは任せろと言った。 外道を狩る、と。 その言葉が頼もしかった。信頼してはいけない悪魔の囁きが今は頼もしかった。 けれど、セリューは雪ノ下雪乃を殺すかもしれない含みを持たせていた。 悪に染まっているかどうかは目を借りるかもしれない。 つまり自分が雪ノ下雪乃を悪と告げればセリューは彼女を殺すこと。 これ以上大切な人が死んだら自分が自分を保てなくなってしまう。 雪ノ下雪乃は悪ではない。解り切っている。 だが脳内は最悪の結末しか導いてくれない。首を飛ばされる雪ノ下雪乃の姿が現れる。 行き過ぎた正義が、由比ヶ浜結衣には悪に見えて来ていた。 口から放たれる無数の言霊は小泉花陽に迫り、彼女の仲間であるμ'sを蜂の巣にしている。 少しでも考えればμ'sが殺し屋集団――セリューが定める悪ではないと解るのに。 南ことりとやらは確かにセリューへ殺意を向けたかもしれないが、小泉花陽は違うだろう。 己の正義だけを信じている狂人に対し、恐怖の面が増幅していく。 もしも矛先が自分に向いたら――死んでしまう。 どうすれば助かるのか、解らない。 正義を盲信するなど由比ヶ浜結衣には不可能だ。 セリューとは生きて来た世界が違う。優しい世界に殺意など必要ない。 彼女に対しどう接すればいいのか。 自分が死ななければいい。けれど、このまま一緒に居れば雪ノ下雪乃が殺されるかもしれない。 雪ノ下雪乃が殺されれば友達である自分も殺されるかもしれない。 闇が心を埋め尽くし、どうすればいいか解らないまま時間が過ぎていく。 そして後に現れたホムンクルスが彼女の方針を大きく揺らす声を出し――雪ノ下雪乃に会うために、生き残るために悲劇が生まれた。 【これからの物語】 疲労の果てに意識を手放したマスタングが回復するまでの間、仮拠点とする小屋を目指すセリュー達。 彼女を先頭に動いており、その数は五名である。 セリューに一番近いのは島村卯月である。極自然に傍をキープしている。 その後ろに由比ヶ浜が瞳を濁らし不安そうな表情を浮かべながら歩いてる。 後続にはウェイブが小泉花陽に気遣いながら歩いており、当然ではあるが女性の比率が多い。 一見総合戦闘力が著しく低いチームに見えるが、大方何かしらの力を所有しているのだ。 唯一の男性であるウェイブは帝都の軍人であり、彼の力は一種の完成形とも呼ばれている。 先頭を歩くセリューは生物帝具との連携で見た目からは想像出来ない破壊力と爆発力を秘めている。 一般人である由比ヶ浜は銃火器を所有しており、島村卯月は誰にも知られていないが帝具を所有している。 小泉花陽は戦闘能力を所有していないが、それが普通であり日常世界で異能を持っている人間の方が極端に少ない。 襲撃者が現れたとしてもある程度は対応出来るだろう。寧ろ返り討ちも視野に入る。 「小屋までもう少しですよ! さぁ!」 笑顔で振り向いたセリューは人差し指を天高く上げると激励の言葉を掛ける。 実際に歩いた距離と時間が比例しなく、遅い移動速度に彼女は発破を掛けたつもりだった。 しかし一行は元気に言葉を返す訳でもなく下を向いたり愛想笑いで流していた。 「私も頑張りたいんですがちょっと休憩しません?」 「俺も賛成だ。セリュー、少し休むぞ」 一刻も早く行動したいのはセリューだけであり、島村卯月とウェイブが休憩を提案した。 セリューはぐぬぬと声に出した後、数秒黙ってから承諾し一行は近場に腰を降ろした。 「気遣い出来ない私がいけませんね……」 「セリューさんが頑張っている証拠です。お茶どうぞ」 落ち込んでいるセリューに対し島村卯月はバッグからお茶を取り出し渡す。 仲の良い女性達を見ている光景はとても微笑ましいが状況が状況である。 殺し合いの中では非日常が理となり日常が浮いてしまう。彼女達は浮いている。 由比ヶ浜結衣と小泉花陽は目の前で仲良くお茶を飲んでいる二人に対し引いている。 何故彼女達はこうも平然としているのだろうか。或いは振る舞えるのだろうか。 由比ヶ浜結衣はセリュー・ユビキタスの恐ろしさを知っている。 島村卯月が彼女と仲良くしている光景が信じられない。 小泉花陽は愛する仲間をセリュー・ユビキタスに殺されている 島村卯月が彼女と仲良くしている光景が信じられない。 本来ならばセリューは正義を掲げ悪を断罪する言わば正義の味方とも捉えられる存在だ。 殺し合いの場でも戦闘・精神共に他の参加者を支える人物になれるだろう。 問題は尖り過ぎた正義感だ。彼女の中に存在する正義はこの世全ての悪を断罪する、つまり殺すこと。 定義は彼女が悪と認定した存在だ。誰かの知り合いだろうと悪は殺す。 爆弾に何て誰も触りたくない。 セリュー・ユビキタスに近づく島村卯月を由比ヶ浜結衣と小泉花陽は理解出来ない。 「ことりちゃんの荷物……」 小泉花陽はセリューから若干強引気味に譲り受けたバッグの中に腕を入れる。 このバッグは殺された南ことりが持っていた形見のような物。自分が持たなければと思っていた。 絶対にセリューには持たせたくない。これ以上私達の思い出を汚さないでほしい。小泉花陽の心が叫んでいる。 セリュー・ユビキタスの存在を許せない――いや、彼女は本当に同じ人間なのか。 人殺しの気持ちなど理解出来ないし、その人殺しが正義を掲げているなど有り得るのだろうか。 解らない、けれど殺し合いの中で彼女達に立ち止まっている暇など無いのだ。生きたいならば生きてみせるしかない。 力を貸して欲しい。そんな気持ちで南ことりのバッグから出て来たのはヘルメットだった。 少々機械的な部分はあるが変哲もない普通のヘルメットである。 小泉花陽はヘルメットの上部に付属していた紙を取ると書かれている文章に目を通す。 『サイマティックスキャン妨害ヘルメット』 名前から察するにサイマティックスキャンを妨害するヘルメットなのだろう。正直な感想である。 『自分が滞在しているエリア内の人の中で一番良好なサイコパスを自分のサイコパスとして監視システムに送ることが出来る』 説明を読んでも理解が出来ない。だが、このヘルメットは南ことりに支給された物だ。 彼女が使用したかどうかは不明だが、彼女の温もりを感じれる支給品はこのヘルメットだけである。 きっと南ことりが残してくれたヘルメットが自分を助けてくれる――小泉花陽はバッグに支給品を戻した。 「由比ヶ浜、顔色が悪いけど大丈夫か?」 「へ? あ、あぁ……えへへ」 一人輪の中から外れて座っていた由比ヶ浜結衣にウェイブは声を掛ける。 急な声掛けに可愛い声を上げた彼女の隣に座り、適当に草を毟る。 手放した草は風に乗ってどこまでも、どこまでも運ばれて流されていく。 「あのな、セリューは熱くなるとテンション上がって周りが少し見えなくなる奴なんだ」 セリューの仲間であるウェイブは彼女の言葉を疑わない。 しかしその言い分が万人に受け入れられないのも理解しているのだ。 殺伐な世界で生き抜いて来た彼らだからこそ理解出来る生と死が隣り合わせの緊張感。 由比ヶ浜結衣は彼らと同じように帝都で生きて来たのか、それは違う。 何の罪も無い、戦う必要も無い由比ヶ浜結衣にとって殺し合いの現実は非情である。 既に聞いている通り彼女の知り合いである比企谷八幡は放送で名前を呼ばれ死んでいる。 ウェイブはその傷を癒せるとは思わないが少しでもフォローしようと思い由比ヶ浜結衣に声を掛けた。 「少し……ですか。ウェイブさんとセリューさんは前からの知り合いだから……」 「それも解ってるつもりだよ。さっきは済まなかった、盾とかアイツが変なこと言っちまって」 彼は頭を下げる。 セリューはサリアと名乗った女性から聞いた比企谷八幡のことを話した。 内容は知人にとって聞かせたくない結末。それでもセリューは悪気無く、笑顔で言葉をガトリングのように連打した。 放たれた無数の弾丸は由比ヶ浜結衣の心を容赦なく穴開きにし、彼女の心は風すら通り抜ける程に空っぽ。 話題が小泉花陽を始めとするスクールアイドルに流れていなければ由比ヶ浜結衣は壊れていたかもしれない。 ウェイブは自分の言葉が少しでもセリューに対する印象が変わればいいと思っていた。 嘘も狡賢さも無い、仲間を大切にしている絆が存在する故に出て来た言葉だ。しかし。 「セリューさんには従っていますけど正直……いや、なんでもないです。 ――よっし! そろそろ行きません? セリューさん、私は大丈夫です」 「おい……」 会話を無理矢理終わらせるように元気を装って由比ヶ浜結衣は立ち上がった。 行動の理由は唯一つ、セリューの話をしたくないからである。 笑顔で立ち上がった由比ヶ浜結衣を見てセリューと島村卯月は同じタイミングで彼女らも笑顔になる。 三人の可愛らしい女性が笑顔だ、端から見れば何と微笑ましい光景だろうか。 由比ヶ浜結衣は心に闇を仕舞い込み、自分の生命を助けるためにセリューに同行している。 島村卯月は現実を受け入れながらも目を背き、矛盾から逃げるようにセリューに依存している。 セリュー・ユビキタスの笑顔には悪を根絶やしにする野望と夢が詰まっており、その性質は狂人である。 毒と闇と泥。暗いモノを背負い込む彼女達の笑顔、何時まで続くのだろうか。 「解りました! ガハマちゃんの言葉通り歩き出しましょう!」 右手を高く上げて太陽を指さすセリュー。その笑顔はお天道様にも負けない程に輝いていた。 ☆ イェーガーズ本部に辿り着いた狡噛慎也を待っていたのは静寂。 足跡こそ有るものの、人の気配が全く無く時既に遅しの言葉が適当な状況であった。 ――穂乃果から聞いていた連中は動き始めていたか。 一通り中を見回った狡噛慎也は西の方へ続いている足跡を見つめていた。 中で感じたことと言えば特段何もなく、血痕があったぐらいだ。話しに聞くセリュー・ユビキタスとやらに違いない。 小泉花陽、ウェイブ、ロイ・マスタング。穂乃果と黒子から聞いた三人の姿も無かった。 彼らはセリュー・ユビキタスと一緒に行動していると考えて間違いないだろう。 ――書き置きには図書館へ向かうと書いてあったが……違うな。 誰もいないイェーガーズ本部の中にあった書き置きは高坂穂乃果達に向けられていた。 誰が書いたかは不明だがセリュー・ユビキタスでないことだけは理解出来る。 高坂穂乃果達と出会って一番困るのは彼女だ、わざわざ自分の行き先を知らせる訳がない。 最も殺したいと思っている可能性が濃厚のため、彼女の可能性も否定出来ないが。 それに書き置きに従う必要はない。 本部入り口に戻ってきた狡噛慎也は足跡を見つめる。 図書館へ――向かっていない。 ――足跡の数からして五人か。 穂乃果達から聞いていた数と異なるが然程問題はない。 寧ろ建物の中に他の人物が居る可能性の方が高く、自然な結果である。 ――大きさ的に少年少女が多いな。 ――しかし成人男性サイズが一人分しかない。ウェイブとマスタング、どちらかが別のルートを通ったか? 足跡の大きさからセリュー一行を推測する狡噛慎也であるが、成人男性が一人しか確認出来ない。 小柄な人物ならば納得は出来るが、穂乃果達から説明は受けていない。 不自然と考えるべきか、或いは何かしらの理由で背負われて行動しているか。 戦闘で負った傷によって行動出来ない仲間を背負い歩く。 そう考えれば可怪しいことは存在しない。もしくは既に消されているか。 ――無い、な。どちらかが殺されていれば生き残っている方が抵抗する筈だ。 聞けば軍人であると言う。 仲間を見捨てて逃げる程愚かな男達ではないと信じたいのが本音だ。 ならば生きている線に賭け、足跡を辿るしか無い。 「晒し首を考えるような女だ。ロクな奴じゃないのは解っている」 無意識にタバコを取り出そうとした狡噛慎也は火を点けることなく、一度溜息を憑いてから歩き出した。 ☆ 小屋に辿り着いたセリュー一行は先頭である彼女を残して外で待機している。 セリュー曰く、片付けがあるから待っていてくれ。 言葉通りに従う彼女達はウェイブが見張りを担当し女性三人が休憩している。 剣を握り剣先は下ろしている。 人影或いは奇襲があっても対応出来るように警戒度は限界にまで高めていた。 「その服装――お前」 「軍服に反応か。見覚えがあって私を知らないとなると君はマスタング君と出会ったのかね?」 現れた眼帯の男。見た目は初老でマスタングと同じ青い軍服を纏っている。 ウェイブはマスタングから眼帯の男の話を聞いており、下ろしていた剣を持ち上げ臨戦体勢に移行。 どうしてホムンクルスばかりと遭遇するかは不明だが泣き言も言っていられないだろう。 彼と同じくマスタングから眼帯の男を聞いていた小泉花陽の表情が一瞬で緊張に包まれていた。 聞いた話が本当ならエンヴィーやキンブリーと同じように最も出会いたくない存在の一人であろう。 眼帯の男を知らない由比ヶ浜結衣と島村卯月。最初は状況を飲み込めなかったが流石に理解出来る。 ウェイブが言葉を多く語らずに臨戦態勢に移行したのだ、つまり目の前の男は敵であると。 由比ヶ浜結衣は眼帯の男から遠ざかり、島村卯月は自然とセリューが居る小屋へ近付いていた。 そして思い出すは殺人名簿。 「マスタングから話は聞いているぜ――ホムンクルス」 構えた剣が力みによって少し揺らぐ。 目の前のホムンクルスは隙一つ見せずに立っている。 武器も構えていないのに気を抜いていると吸い込まれそうな程に威圧感を放っている。 ウェイブの唾を飲む音が明るい草地に響いた。 「なら話は早い。マスタング君は何処かね、白井黒子君と高坂穂乃果君から聞いた話だと随分と傷を負っているようだが」 「テメェ、あの二人に何をしたッ!?」 「何もしとらんよ若造」 ホムンクルスの口から語られた彼女達の名前にウェイブの脳内には絶望の可能性が生まれる。 本能のままに叫ぶがホムンクルスは何もしていないと告げる。確証も無いままに。 「信じられっかよテメェといいエンヴィーといい人を化かす野郎のことなんざ」 「彼女達にも言ったが私も巻き込まれている立場何でね。出来れば争い事は避けたいんだよ。 闇雲に参加者を減らしても帰れる保証など無いのでね……さて、彼女達は私を信じてくれたが君はどうかね」 「穂乃果達がお前を信じた証拠があるのか? あってもエンヴィーと同類の奴を信じる気にはならないな」 「君の言う通りだ。私には証明出来るモノが無い。白井君と高坂君の名前を知っているのも。 君達とマスタング君が知り合いだと知っているのも。此処に君達が居ることを知っているのも――聞き出してから殺している可能性もある」 ホムンクルスの言葉が終わると同時にウェイブは走り出していた。 剣を掲げ一瞬で距離を詰めると眼帯側に刃を寄せ瞳を斬り捨てるように横に一閃。 しかし刃がホムンクルスに届くことはなく、響く金属音が肉を切れていない証明となる。 バッグから剣を縦に取り出したホムンクルス――ブラッドレイはウェイブの一撃を防いだ。 両腕で振るった攻撃に対し、予備動作無しで片手で受け止める。 力の差を見せ付けるつもりであったが、流石に咄嗟の行動では脆く、若干ではあるが靴底が大地を削る。 「行動の速さと踏み込み、太刀筋。素晴らしい力を持っているが惜しいな」 (このジジィっ、今のを防ぐのかよ――ッ) 「お前達は此処から逃げろ――っおぁ!?」 女性三人に対し叫ぶウェイブであったが彼の体勢が大きく崩れてしまう。 ブラッドレイが力を緩めるとウェイブの力は明後日の方向へ大きく逸れてしまい、数歩進んでしまった。 その足をブラッドレイに払われ、ウェイブは大地に倒れ込むこととなってしまう。辛うじて剣を手放してはいないが。 「少し話でもしようじゃないか」 「――ィ」 ブラッドレイはウェイブの顔近くに剣を振り下ろし彼に恐怖を刻み込む。 一度殺されるビジョンを持たされてしまえば、即座の行動に対し大きな抑制力へと変化する。 ウェイブの動きさえ止めてしまえば後は弱者だけだ、恐れる必要など無い――無論ブラッドレイは油断しないが。 「私はキング・ブラッドレイ。君達の名前を一人ずつ答えてもらおうか」 「……ゆ、由比ヶ浜結衣です」 「ぁ……小泉……花陽です」 「俺はウェイブだ……ちくしょう」 「島村卯月です」 「――ふむ」 島村卯月の名前を聞いた瞬間にブラッドレイの眉が少しの動きを見せた。 女性の中で一人だけ声を詰まらせること無く言い終えた精神力には感心する。 戦争とは関係ない彼女の境遇を考えれば大したものだ。 島村卯月、やはり彼女も盟友なだけはある。 「渋谷凛君と本田未央君の知り合いで間違いないかね?」 「未央ちゃんとり……凛ちゃんを知っているんですか!?」 ブラッドレイの口から出て来た大切な名前に反応した島村卯月は危険を省みず彼に近付いた。 一歩一歩に重さはなく、彼女達を思う気持ち一つで島村卯月は危険人物に近付いている。 最も渋谷凛と本田未央の名前を聞いてから彼女の脳内に危険信号は発生していない。 現段階においてキング・ブラッドレイは危険人物ではなく、大切な人達を知っているおじさんの認識である。 島村卯月の顔に闇は浮かんでいなく、心の何処かで渋谷凛が生きていることを夢見ていた。 「本田未央君から聞いている。同じ……アイドルグループの仲間とな。 そして渋谷凛君のことだが……残念であった。彼女は強い女性だったんだがね」 「二人は何処に居るんですか!? 教えてください!!」 「……君は」 迷い一つ無い瞳で島村卯月は二人の居場所をブラッドレイに尋ねている。 その姿は必死さに溢れていて、渋谷凛の居場所すら尋ねているのだ。ブラッドレイは考える。 彼女は死体の場所を尋ねているのか、それとも渋谷凛の死を受け入れていないのか。 前者ならば簡単だ。自分が手を下したのだから場所は解っている。 後者の場合ならば最善の注意を伴って彼女のフォローに回るべきだが、その必要は無い。 状況の展開によっては此処で島村卯月を殺す可能性があるのだから。 「辛いようだが渋谷凛君を殺したのはおそろくエンブリヲだろう。 私が駆けつけた時には既に遅くてな……逃してしまった。仇を取ってやれなくて済まな――?」 「エンブリヲさんのことはセリューさんが味方だって言ってましたよ、嘘憑かないでもらえますか?」 瞳は濁っていない。 全てが泥のような穢れで構成されている真っ黒で、一種の芸術性さえ感じられるような黒。 瞳は濁っていない――純粋な程に穢れで染まっているから。 島村卯月の最重要決定権はセリュー・ユビキタスに依存している。 セリューが正義を第一に考え行動しているように、島村卯月はセリューの判断を第一に行動している。 セリューが悪と言えば悪であり、正義と言えば正義である。 唯一小泉花陽に対するスクールアイドルへの批評や暴言は同じアイドルの仲間として認めていない節がある。 しかしそれ以外の要素は全てセリューに依存していた。 現にブラッドレイの発言によるエンブリヲが悪の証明はセリューが味方と言っているため、偽りの戯言と捉えていた。 「……セリューとやらに随分と肩入れしているようだね。 白井君達から聞いた話だと人格に問題がある危険人物だと思っていたが」 「島村はこの会場で一番最初に会ったのがセリューだ。なぁブラッドレイ、あんたもあいつの仲間に会ったならわかんだろ? 巻き込んじゃいけねえ人達がどれだけ恐怖に怯えているか、どれだけ不安になっているか。 ……確かにセリューはちょっと突っ走ることもあるけど平和を目指す気持ちと正義を信じる心は本物なんだ」 「それらしいことを言っているつもりだがね、ウェイブ君。 君とセリューとやらは仲間らしいが他の皆は違うだろう。信頼感が違う。 白井君達を殺しに掛かったらしいではないか、それでも君達は彼女を信頼するのかね」 ブラッドレイの言葉を聞いていた四人に電流が駆け抜けた。 彼が告げたセリュー・ユビキタスは白井黒子達を殺しに掛かった証言。 彼女達がセリューから聞いたのは真逆の状況であり、彼女は白井黒子達に襲われたと聞いていた。 食い違う情報。しかし発言者はホムンクルスでありその危険性はマスタングから聞いている。 信じるわけにはいかない――けれどセリューを完全に信じ切っているのは島村卯月しかいない 一番最初に反応を示したのは小泉花陽だ、考えるよりも先に発言していた。「やっぱり」と。 南ことりを殺害したセリュー・ユビキタスを小泉花陽は信用し切れていない。 無論キング・ブラッドレイも信用していないが、高坂穂乃果達が殺しを行う情報何て最初から受け入れることなど不可能であった。 あの二人がセリューを殺そうとするなど可怪しいと報告を受けた時に思っていた。 穂乃果は自分の大切な仲間だ。その仲間が人殺しに加担するなど有り得ない。 黒子は自分がこの会場で初めて会った人だ。年下ながら頼れる存在であり、小泉花陽を支えていた人物でもある。 氷を操る鳥に襲われた時も彼女は助けてくれた。何よりも殺しに加担するような人間何て有り得ない。 二番目に反応したのは由比ヶ浜結衣である。 その言葉一つが全てを物語っており、彼女の方針が大きく傾いた。 比企谷八幡の死から続く闇の渦は此処に真髄を見せ、悲劇の幕を開けることになる。 「あの人、やっぱ信用出来ないよ……」 三番目に反応したのは島村卯月だ。 彼女の中でセリュー・ユビキタスという存在は絶対である。 いつの間にか島村卯月の心を支配していた――恐らく南ことりが殺された時から。 あの時目撃してしまった光景が脳内に焼き付いている。忘れたくても忘れられない。 自分の首を触り目を泳がせながら、彼女の呼吸は乱れていく。 セリュー・ユビキタスが嘘を憑いていない、など絶対に言い切れることはない。 寧ろ聞いていた状況で白井黒子と高坂穂乃果が襲ってくる方が可怪しいのも理解している。 セリューの人格が破綻しているのも解っているつもりだ、けれど絶対である。 彼女は絶対だ、彼女に逆らえれば自分も殺されてしまう。首。彼女に従っていれば殺されることはない。 けれど、自分が所有していた名簿――渋谷凛の名前を潰され時、心から泥が溢れそうになっていた。 そして今も。 「セリューさんが嘘を……? でも、凛ちゃんと未央ちゃんを知っている人が嘘を憑いているのも信じられない……あれ? 私、何か可怪しいことでも言っているので、しょ、う、か……ううん、セリューさんが嘘を憑く筈がありません」 次に反応していたのがウェイブ――最初に反応していたのは彼かもしれない。 ゆっくりと立ち上がり、ブラッドレイの間合いから離れ彼の行動を監視する。 セリューの報告があった時、マスタング恒例のエンヴィー発言があったために流れてしまった。 言えばよかった、マスタングにお前はエンヴィーに囚われ過ぎだ、と。 因縁や恨みが在るのは解るが、何でもかんでもエンヴィーに疑いを掛けた所で何も進まない。 現に高坂穂乃果を敵視した時も、島村卯月達を敵視した時も。有り得ない、そう言いたかった。 気絶している彼を責めても仕方がない。今はブラッドレイに悟られないことを祈るばかりである。 エンヴィーが高坂穂乃果に変化したとして、何故白井黒子が協力するのか。 考えなくてもセリューの報告は崩壊しており、エンヴィーの件で流されていなければ恐らくイェーガーズ本部は血で染められていた。 「島村……可笑しくねぇ。お前は何一つ可笑しくないんだ……悪いのは、悪いのは……!」 セリュー・ユビキタスではない。彼女を放置していた元の仲間と汚れた世界だ。 誰が責任を取るのか。 同僚が為出かした取り返しの付かない事態にウェイブは拳を握り震えていた。 「さて、君達に教えて貰いたいのはマスタング君の居場所とセリュー・ユビキタスの居場所だ。 マスタング君から聞いているとは思うが別に私は無差別に殺し回っている訳ではない。 脱出を第一に考えているのでね。図書館にはその手掛かりとなる人物が居るのでな。彼と合流する前にマスタング君を借りたい。 ついでだが、本田未央君も図書館に居る。白井君達は音ノ木坂学院にでも行っていると思うが確証はない」 ブラッドレイが語った言葉には彼女達が求める情報があった。 島村卯月は本田未央に逢いたい。嘘や偽りの無い事実である。 小泉花陽は高坂穂乃果と合流したい――もう離れたくないから。 「一方的に話して申し訳ないがマスタング君とセリュー君の居場所を教えてもらえるかね」 「……………………」 誰もブラッドレイの言葉に答えない。 この中で一番行動するべき人間はウェイブであり、彼も自覚している。女性に押し付ける訳がない。 マスタングの居場所を教えても、ブラッドレイとは敵対関係だ。そして彼はエンヴィーの仲間。 教えた所で良い結末が訪れることは想像出来ず、マスタングが殺される未来が見える。 剣を構え、再び臨戦態勢に移行する。 セリューの居場所を教えても十中八九殺されるだろう。 仲間を売るような真似など誰がするものか、なら自分が此処で相手をして――。 「セリュー・ユビキタスなら彼処の小屋に居ます! お願いです、助けてください!!」 その言葉を聞いたブラッドレイの眉が動き、彼は黙って彼女が指を指した小屋へ歩き出す。 剣を軽く回した後に空を斬り、自分の状態を確認しながら着実に小屋へ向かっている。 渋谷凛を殺した所で、セリューに自分の悪評をばら撒かれては意味が無い。 何故殺したのか、敬意を示した渋谷凛に見せる顔が無い――のは二の次三の次であり、自分が動きやすい環境を創る必要がある。 無論渋谷凛に対しての思いは偽りではない。 殺人名簿が本物ならば自分やセリムのことが記載されているのは間違いないだろう。 タスクや本田未央と友好を築いた所で殺人名簿が露見されてしまっては信頼など簡単に崩れ落ちる。 ロイ・マスタングのことも記載されている筈だが軍人等何かしら理由を説明したのだろう。 でなかれば話で聞いているセリューとやらが殺している筈だ、つまりブラッドレイにも弁解する余地があった。過去形だ。 マスタングから自分のこと――ホムンクルスの情報が渡っていれば全てに意味が無くなる。 ウェイブの反応からして既に素性が明らかにされてしまったようだ。エンヴィーとも交戦していれば確実に黒判定であろう。 「礼を言うよ由比ヶ浜君。タスク君達と協力して首輪を外せることが出来たら君のも外してあげよう」 「タスク……やっぱりセリューの言っていることは全部デタラメ……ならヒッキーも――」 エンブリヲが正義でタスクが悪。セリューの証言である。 タスクが正義でエンブリヲが悪。ブラッドレイの証言である。 白井黒子と高坂穂乃果はセリューを殺しに掛かった。セリューの証言である。 セリューに白井黒子と高坂穂乃果は殺され掛けた。ブラッドレイの証言である。 比企谷八幡は盾にされて死んだ――セリューの妄言である。 ブラッドレイの発言から由比ヶ浜結衣のセリューに対する姿勢は完全に変わった。 いや、元々一貫していたが、恐怖故に隠していた思いが全面に飛び出すのだ。 セリュー・ユビキタスこそが悪である、と。 最悪だ、とウェイブは走り出しながら考えていた。 今まで黙っていたことが、目を背けていたことが此処に来て最悪の形で爆発してしまった。 元々セリューの行き過ぎた正義には注意をしなければと思っていた。 けれどそれは帝都の、世界の、民のためであり、仕方のない正義だと思い込んで自分に言い聞かせていた。 それがどうした、殺し合いに巻き込まれてからセリューが殺したのは小泉花陽の友人であり、守るべき存在ではないか。 自分はクロメ、天城雪子、名前も知らないけれど仲間だった犬。 助けたくても助けれない参加者が居た。自分の弱さが原因で救えなかった参加者が。 救える生命は全て救う――イェーガーズの仲間も同じ志を持っていると思っていた。 それは間違っていないと思う。 だがセリューが正しいかどうかを聞かれると黙ってしまう。 「やらせるかよォ!!」 縦に振り下ろした剣は振り返ったブラッドレイの剣によって防がれる。 更に一撃を加え体勢を崩そうとするが、ブラッドレイは顔色一つ変えずに防いでいた。 『セリューが間違っていようと仲間を見捨てるつもりはない』 仲間が殺されるのを黙って見ていられる程ウェイブは大人ではない。 溢れ出る怒りを剣先に乘せ、何度もブラッドレイの剣に叩き付けていた。 「戦う相手を間違えているんではないかね……まぁいい」 ウェイブが剣を振り上げた瞬間、ブラッドレイは空いている左腕でウェイブの顔面を掴み込む。 外から加えられる力によって歪む顔面だが、その力からは直ぐに開放された。 「――ガッ」 力だけでブラッドレイはウェイブの身体を宙に上げると、そのまま大地へ叩き付ける。 脳天から大地に叩き付けられたウェイブの口から血が飛び出し、草地を赤で染め上げた。 ブラッドレイは斬り付けようとしたが、自分の得物を優先するためにその場を後にし、再び小屋を目指す。 彼が歩き出したと同時に小泉花陽はウェイブの傍に駆け寄り、バッグから水を取り出した。 大丈夫ですかと声を掛けるも、目元を抑えて「ちくしょう」と小さく呟くだけだった。 「さっきからの物音は一体――!!」 「私はキング・ブラッドレイ。君をこれから殺す者だが何か言い残すことはあるかね」 小屋から出て来たセリューは得物を見付けた獣のように走り出す。 その表情は狂っているまでに黒い笑顔、悪を殺せる喜びに満ち溢れていた。 「殺人名簿にも載っていた男キング・ブラッドレイ! 私を襲うということは貴様は悪! 悪だ! 死ね!!」 日本刀を取り出しブラッドレイを斬り付けようとするセリューだがその一撃は防がれる。 構いなしに力で押し切ろうとするも、均衡を崩すことは出来ず、逆に押し返されてしまう。 後ろへ数歩蹌踉めいてしまい、その隙を狙ってブラッドレイが踏み込んでくる。 彼が繰り出す突きの下に刃を潜らせ、上に振り上げることで剣先を上空へ誘導し回避する。 ブラッドレイは瞬時に剣を引き戻し再度突きを繰り出すも、セリューは上から叩き付けるように防いだ。 「話は聞いているぞキング・ブラッドレイ、いやホムンクルス! マスタングはエンヴィーと天城雪子を間違えて殺したが私にそんな期待をするな、直ぐに殺してやる!」 「彼はそんなことをしているのか」 「馬鹿の一つ覚えのように会う人間全員に貴様はエンヴィーかエンヴィーか……そうやって人を殺しているんだ!」 「全く……本当に私の知っているマスタング君かね?」 剣を日本刀で上から押さえ付けていたセリューは踏み込み、ブラッドレイに頭突きをかます。 しかし躱されてしまい、彼に背を向ける形になったため、急いで振り返るが遅い。 「なっ」 下から上げられたブラッドレイの一閃に日本刀は遠くに飛ばされてしまう。 無防備になったセリューに対し彼は喉元を斬り裂こうとするが、これも遅い。 上空から降りてくる物体を避けるために大きく後退し、発生する砂煙から目を守るために腕を盾にする。 砂煙が晴れると其処にはグラトニーのような異形の怪物が降臨していた。 「ガアアアアアアアアアアアアアアアア」 「近くで喚くでない、狗め」 生物兵器であるコロが犬には似合わない肉と力を身に付けた姿でセリューを守るために小屋から飛び出して来た。 吠えるコロにブラッドレイは愚痴を零す。これで二対一だ。 ウェイブが真っ直ぐに走れるまでもう少し時間が掛かるだろう。 力量から察してウェイブは中々の腕を持っているが所詮はそれまで。 セリューも剣の腕は高くなく、この戦闘での懸念事項と言えば目の前に居るホムンクルスのような怪物だけである。 先に片付けるべきは怪物だ。走り出そうとするブラッドレイだが戦闘を中断するように声が聞こえてくる。 「やめてください、由比ヶ浜ちゃん!」 「離してよ……離してよったまむん!!」 戦闘が行わている地点から少し右に逸れている大地。 其処にはショットガンを構える由比ヶ浜結衣とそれを防ぐ島村卯月の姿があった。 島村卯月は両腕で銃身を掴み、対象となっているセリューに弾丸が飛ばないように力を振り絞って銃口を下へ逸らしていた。 「なんでセリューさんを撃とうとしているんですか!?」 「なんでって……あの人生かしといちゃまた被害者が出ちゃうよ……人が死んじゃう。 ヒッキーや首だけの……南ことりのように死んじゃう人が……もうやだよぅ……。 なのに自分は大切だからって穂乃果ちゃん達に襲われたって嘘を憑いていたんだよ、そんなこと有り得ないのに……ねぇ!」 溜め込んでいた泥が溢れ出し島村卯月に浴びせるように言葉を吐き出す由比ヶ浜結衣。 出会いも最悪だったセリューを信じるなど無理であった。恐怖で支配されている状態を信頼とは言えない。 同じ立場である島村卯月が仲間だと思っていたが違う。彼女は本気でセリューを信頼している節があった。 疑念は更に積もる。 比企谷八幡のことを自分の目の前で盾にされただの捨てられただの言いたい放題であった。 許せなかった。警察がどうしてそんなことを言えるのか。許せなかった。 ブラッドレイの言葉から泥はもう許容範囲以上に溜まり込んでしまった。 元々高坂穂乃果達を知らない由比ヶ浜結衣であるが、セリューから報告を受けた時に疑問が生まれていた。 一緒に行動していたマスタング達が有り得ないと言っていたのだ。どちらも会って間もないが信用は後者に傾いていた。 心の何処かでセリューを信じたくなかったのだろう。 「たまむんはさ……もう、壊れちゃったんだね――って私も、だから一緒だね」 「由比ヶ浜ちゃ――きゃっ!?」 緩んだ笑顔を一瞬だけ覗かせて。 由比ヶ浜結衣は島村卯月を飛ばし、尻もちを着かせた後で、ショットガンを一人、構えた。 由比ヶ浜結衣と島村卯月のやりとりを見ていたセリューの全身から汗が噴き出るような感覚に襲われる。 (高坂穂乃果達とのやり取りを誰かに――そんなの一人しかいない) 無論高坂穂乃果に襲われたことは偽りではない。 しかし説明の時には大分自分を美化していた自覚がセリューにはある。 元々高坂穂乃果達と行動していたウェイブとマスタング、小泉花陽には悟られなくなかったが遅かったようだ。 「ウェイブさんを攻撃したのはお前で間違いないな。そして妙なことを吹き込んだのも」 「はて、妙なこととは何のことかな。私の目では白井黒子君達が殺しに加担するような人間には見えなかったがね。 そして私も詳しくは知らないがエンブリヲは君の価値観で定める悪に該当するがまぁ……気にしないだろう」 ブラッドレイは自分が逃した白井黒子達と接触したらしい。 マスタング達への説明時にはエンヴィーの線も含んでいたが、彼らは自分を黒と見るだろう。 唯一幸いなのはマスタングがバッグから出ていないことだ。 話を聞く限りブラッドレイとマスタングは敵対しているらしく、まだ自分側に引き込めるかもしれない。 などと考えているが、セリューの思考はこの後、一時途絶えてしまう。 ☆ 島村卯月を押し飛ばした由比ヶ浜結衣はショットガンの狙いをセリューに定める。 ブラッドレイと戦闘を行っているが、会話に伴い動きを止めている今が好機。 震える指に無理矢理力を注ぎ込んでじっくりとトリガーを引く。 「だめ……だめぇ!!」 身体を起こした島村卯月はショットガンの銃身に多い被り強制的にセリューから狙いを逸らす。 対する由比ヶ浜結衣も無理矢理ショットガンを持ち上げ、再度構えるが今度は身体に島村卯月が纏わり付く。 「どうしてそんなにセリューを庇うの!? 庇って何があるの!?」 「セリューさんは私を助けてくれました……セリューさんは私を守ってくれたんです」 「目を……覚ましてよたまむん……っ」 「私はもう……セリューさんがいないと……凛ちゃんみたいに……りん…………ぁぁ」 話している内に由比ヶ浜結衣は島村卯月がセリューに依存していることを確信した。 確かに彼女に守ってもらえば生存率は上がるかもしれないが問題はそのセリューにある。 人格や行動、価値観に大きな問題があり、現に争いの火種になっている。 目を覚ませ。強い言葉を投げ付けたいが涙を流す島村卯月を見ると言葉が詰まってしまう。 開放してあげなきゃ、セリュー・ユビキタスから。 比企谷八幡をネタとして扱ったセリュー・ユビキタスを。 そして何よりも自分のために由比ヶ浜結衣はトリガーを今度こそ引いた。 「凛ちゃんみたいに死んじゃうのは嫌だ……嫌あああああああああ…… ………………あれ、私、撃た、れ……………………」 起き上がったウェイブは言うことを聞かない身体を無理矢理走らせた。 小泉花陽は現実から逃げるように顔を伏せた。 キング・ブラッドレイは目を見開いていた。 由比ヶ浜結衣はショットガンを手放し膝から崩れ落ちていた。 セリュー・ユビキタスはコロに腕を喰わせて鉄球を発動していた。 島村卯月はセリュー・ユビキタスを庇ってショットガンの餌食となってしまった。 「ああああああああああああああああああああああああ」 怒りによって表情を歪めたセリューが咆哮と共に大地を駆ける。 これから起こるであろう最悪の事態を防ぐためにウェイブも走るが速さが足りていない。 ブラッドレイとの戦闘によって本調子ではない。今の彼じゃ間に合わない。 由比ヶ浜結衣は自分が犯した罪から逃げるように意識を手放している。 迫るセリューの姿は見えているが、逃げることもせずに、黙って薄ら笑いを浮かべていた。 「ウヅキちゃんをよくもよくもよくもよくもよくもよくもぉおあああああああああああああああああああああ!!」 豪快に振り回された鉄球は遠心力を味方に付け飴細工のように由比ヶ浜結衣の頭部を粉砕した。 飛び散る鮮血と跡形も無く吹き飛んだ頭部から彼女が絶命したのは覆しようのない事実である。 その光景を見ていた小泉花陽は現実か夢か解らなくなっていた。 人が死んだ。しかしこんな呆気無く、簡単に人の生命は終わるものなのか。 苦しんで死んでしまった天城雪子とは異なり、一瞬で死んでしまった由比ヶ浜結衣。 考える内に頭が混乱し、溢れ出る嘔吐感を抑え切れず、彼女は下を向いたまま体内から嘔吐物を吐き出した。 「ウヅキちゃん! ウヅキちゃん!!」 頭部が失くなった由比ヶ浜結衣の身体を蹴り飛ばしたセリューは倒れている島村卯月の身体を持ち上げる。 無慈悲に飛んで行く由比ヶ浜結衣の死体から溢れる鮮血が血の雨となってセリューを包み込む。 島村卯月の身体を何度も揺らすが、反応は一切ない。 何故彼女が死なないといけないのか。どうして死ぬべき人間が死なないのか。 オーガもスタイリッシュも。大切な人達が死んで、悪が蔓延る世界は反吐が出る。受け入れられない。 悪が蔓延るなら。自分が断罪するしかない。 「ウヅキちゃん……後で埋葬してあげるから少しだけ待っててね」 瞳から溢れ頬を伝う雫を指で拭き上げると、セリューの顔は正義の味方へと変貌する。 牙無き人を守り、明日に恐怖を夢見る民を救う正義の味方。 世界を汚す悪と戦う正義の味方。 例え血が飛び散っても行く末は誰もが笑顔で暮らせる世界を目指して、正義の味方が悪を殺す。 己に無理矢理付加値を与え、正義を執行するための建前を創り上げる。 「悲しみのところに申し訳ないが、君も島村卯月君の後を追ってもらう」 島村卯月の元へ駆け寄ったセリューを始末するべくブラッドレイが近付いていた。 自分の悪評を振り撒くセリューを生かしたところでメリットは何一つ生まれない。 彼女が生きていれば多くの死者が出る。問題はないが脱出の手掛かりとなる参加者が殺されてしまっては意味が無い。 白井黒子達から受けた話通り人格が破綻しているセリューを生かす理由など――無い。 「お前が来なかったらこんなことにはならなかった」 セリューはショットガンを拾い上げると片手でそのまま弾丸を放つ。 身体を改造している彼女ならば反動など生身の人間程影響は受けず、無動作で行動。 不意を突く形になるがブラッドレイは信じられないことに剣一つで弾丸を全て捌く。 その光景に瞳を丸くするセリューだが、これから殺す存在だ、驚く必要も萎縮する必要もない。 「キング・ブラッドレイ、亡き友島村卯月のためにもお前を此処で殺す」 ショットガンをバッグに収納するとセリューは鉄球を振るいブラッドレイの眼帯側から仕掛ける。 死角を狙う初歩的な攻撃だが効果は見込める――と思い込んでいた。 「破壊力は有るかもしれんが大振り過ぎる」 自然な動きで鉄球の下を掻い潜ったブラッドレイは剣を構えセリューに接近。 躱された事に驚き、行動が遅れるセリューだが黙って斬られる訳にもいかず、蹴り出しブラッドレイの腹を狙う。 しかし逆に足を掴まれてしまい、身動きが不可能となってしまう。 迫るブラッドレイの剣は簡単にセリューの左目を貫いた。 「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」 「私とのお揃いは嫌いかね」 刺さった後も力を込めて眼球を抉り潰すブラッドレイ。 痛みに耐え切れず顔を歪めて荒れ狂うセリューは強引に腕を振るい、鉄球を呼び戻す。 自分と鉄球の間にブラッドレイがいるため、背後からの攻撃となるが簡単に当てれる程ブラッドレイは愚かではない。 「くそおおおおお……殺してやる、死んで悔い改めろ!」 引き抜かれた剣、開けられた穴から血が吹き出しセリューは左腕で抑え流血を止める。 生まれたての赤児のように叫ぶ訳ではなく、生きている右目は憎しみを込めてブラッドレイを睨んでいる。 対象である彼は剣を抜いた後、セリューの目の前から離脱し鉄球を回避。 ウェイブ、セリューと連戦しているが未だに傷は無し。圧倒的な強さを見せ付ける。 「オラァ!!」 ブラッドレイの背後から剣を振り下ろしたウェイブだが一歩動かれ回避されてしまう。 気配を殺したつもりであったが、ブラッドレイに感知されていたようだ。 無防備となったウェイブの腹に膝蹴りを決め、彼の身体を折り曲げるともう一度足を振り上げ腹を蹴飛ばす。 大地を何度も跳ね上げながら転がっていくウェイブ、彼と入れ替わりにコロが身体を肥大化させブラッドレイに迫る。 口を大きく広げ噛み殺さんと覆い被さるように落下するがその地点にブラッドレイはいない。 「!?」 殺すべき対象が消え、戸惑うコロ。 ブラッドレイは――己より上にいた。 ウェイブを蹴り飛ばした後、迫るコロに気付いていたブラッドレイはコロよりも高く跳び、視界から逃れた。 コロの鼻の上に降り立つと有無を言わさず剣を横に一閃し、コロの両目を潰す。 「!?!?!?!?」 何が起きたか理解出来ないコロは本能と野生に従い己の目先に居るであろうブラッドレイを殺すべく両腕で潰しに掛かる。 しかし両腕は掌を合わせ豪快な音を響かせるだけに終わり、ブラッドレイは既に大地へ降下していた。 「錬成でも行うつもりか?」 掌を合わせた行為に皮肉を一つ飛ばすもコロにはそれこそ理解出来ないだろう。 煽られていると直感し大きく吠えるが、ブラッドレイは耳を防ぐ訳でもなく、迫る鉄球に対処しようと着地と同時に足を動かした。 「死ねええええええええええええええええええ!!」 着地の瞬間なら身動きは取れまい、セリューは鉄球を振るいブラッドレイを殺す。 「手応えアリ――なっ!?」 鉄球に付着していたのはブラッドレイではなく、彼が羽織っていた軍服。 「流石に今のは危なかったが……生憎、この目はよく見えるのでな」 (正義秦広球では動きが大き過ぎてブラッドレイには当てられない……) 鉄球が通り過ぎた地点から更に右へ視線を移行させるとブラッドレイが立っていた。 これだけ戦闘を行っても傷一つ付けられない、今まで対峙して来た悪の中で一番強い。 自分とウェイブとコロを相手に此処まで振る舞える人間はエスデスぐらいしか思い浮かばない。 エスデスよりも強いとは思わない。だが、キング・ブラッドレイは強い。認めざるを得ない。 「しかし私も四人相手は疲れる……どうかね、マスタング君。同じ世界の者として此処は一つ共闘するのもいいと思うが」 「黙れラース。お前まで生きているとなると広川の存在に疑問を抱くな。まるでお父様とやらも生きているように感じてしまう」 セリューが振り向くと、マスタングがウェイブに肩を貸しながら此方へ歩いている。 目が覚めたマスタングはバッグから出てくると傍に倒れているウェイブを助け、セリューの横まで辿り着く。 何も発言せずに視線を横へ逸し倒れている島村卯月とその奥に在る由比ヶ浜結衣だった身体を見つめる。 何が起きたか理解は出来ない。だが結果だけは解る。 誰にぶつければいいか解らない怒りを胸に秘め、彼はブラッドレイへ言葉を投げる。 「お前の目的は何だキング・ブラッドレイ。参加者を殺し回る男だとは……思いたくは無い」 「私の目的はこの会場から脱出し父上の元へ帰還すること……だが君は何を言っている? 『お前まで生きている』『お父様とやらも生きている』……まるで私達が死んでいるかのような発言だな」 「そうだホムンクルス。お前もセリムもお父様もエンヴィーも……グリードも全員死んだ。 記憶を操作されているのかもしれんがお前程の男が広川に洗脳されるとは思わん。 私を騙すつもりかもしれないが、その程度で欺けると思われているとは元部下として心外だ」 「良く回る口ではないか。 聞いた話ではエンヴィーと間違え参加者を一人殺したそうではないか。 どうだ、イシュヴァール人と同じように焼き殺したのかね、マスタング大佐」 「――ッ!!」 ブラッドレイの言葉を聞いてマスタングは無意識の内に焔を錬成していた。 迫る焔を軽く首を撚るだけで回避するブラッドレイは余裕の表情を浮かべている。 後ろでコロを燃やしている焔が、ブラッドレイの恐怖を演出しているかのように盛り上げている。 セリューはコロが燃やされていることに怒りを覚えるが、ぶつける相手はブラッドレイに絞る。 「マスタング……さん。貴方も断罪することになるかもしれませんが今はブラッドレイを一緒に殺しましょう」 「……話してからでは遅い、か」 「ええ。貴方がバッグの中で寝ている間にウヅキちゃんとガハマちゃんは殺されました」 「……っ、そうか。それは――本当なのかウェイブ」 「あぁ……本当、だ……ブラッドレイに殺された」 甘い。 セリューの行き過ぎた正義を目撃しても咎めなかったように。 出会う参加者全員にエンヴィーの疑いを掛けるマスタングに忠告出来なかったように。 ウェイブは真実を押し殺して現場が一番動く選択をした。偽りを吐いて、戦場を調整する。 此処で自分が本当の結果――由比ヶ浜結衣を殺したのがセリューと告げても状況は好転しない。 マスタングが敵に回る可能性も在る。それは避けるべきだ。ブラッドレイは強い、頭数が必要である。 「ウェイブ、何故そんな辛い表情を浮かべているんだ?」 「気にすんなよ馬鹿野郎……俺達は遅過ぎんだ……」 「君は本当にロイ・マスタング君なのかね。私が知っている彼よりも大分小さい男に見える。 バトル・ロワイアルで君が何を得たかは知らないが……その身柄、私が引き受けよう」 駆けるブラッドレイにマスタングは焔を錬成、これを回避される。 今度はコロを焼かないよう方角を調整したのが仇になったか、一人顔を歪めるマスタング。 二人の間にウェイブが入り、剣を剣で防ぐ。 その隙間を縫うように焔が迫る。当然のようにウェイブは回避するがブラッドレイも回避する。 しかも彼が移動した先はウェイブの目の前。剣を振るいウェイブの腕を斬り裂く。 「――テメェも斬られろ!」 ウェイブの左腕を美しく辿ったブラッドレイの剣。 斬り落とすには程遠いが一般人なら喚く程の傷を負ったウェイブ。だが弱音は吐かない。 密着したブラッドレイを斬り裂くべく右腕を払うも、上半身を折り曲げることで回避されてしまう。 体勢を整えたブラッドレイがウェイブを始末するべく動こうとするが、背後から匂う火薬に足を止める。 「塵一つ残らないように吹き飛ばしてやる! あの世で詫び続けろキング・ブラッドレイィィイイイイイ!!」 コロとの連携により正義初江飛翔体を放ったセリューが歪んだ黒い笑みを浮かべて叫んでいた。 初江飛翔体とは無数の小型ミサイルとでも覚えればいい。 キング・ブラッドレイを殺すために彼を包囲するようにミサイルが降り注ぐ。 「――ふむ」 ブラッドレイはミサイル全てを視界に捉え、自分が生き残る最善のルートを導き出そうとしている。 ミサイル全てが一斉に爆発する訳ではなく、誘爆して広がっていく。ならば抜けれる道は必ずある筈だ。 その目で捉えられぬモノなど存在しないと思っていた。が、外部からの干渉は予知出来ない。 「聞きたいことは山程あるがもう一度眠れ――フラスコの中の小人!!」 パチン。 乾いた世界に指を弾く音が響く。 マスタングはブラッドレイの恐るべき瞳を知っている。 無数のミサイルに囲まれようと一度に全て爆発すれば、「回避出来るかどうか見させてもらおうかッ!」 弾かれた指から焔が生まれミサイルに迫る。 既にウェイブとマスタングは爆発の範囲から逃れ――ている訳でもないが距離を取っていた。 伏せれば重症は免れる地点にまで移動済み、爆発の中心に居るのはブラッドレイだけだ。 次に近いのはセリューだがコロに庇ってもらえば死ぬことはないだろう。 決して表には出さないがマスタングは仮にセリューを巻き込んで殺してしまっても――真意は彼だけが知っている。 「余計なことをしおって!」 ブラッドレイの口から初めて怒りが零れる。 焔が到達するまで時間はそう掛からない。生き残る道は運任せと入ったところか。 無論生き残るが、その後の戦闘では不利になってしまうだろう。 マスタングを回収しセリューを殺す。 その後に図書館へ向かいタスク達と合流――計画が大きく逸れてしまった。 一度に多人数を相手にするのは不得意ではないが、個性が強過ぎた。 しかも近接のウェイブ、高火力のマスタング、全身武装のセリューと隙が無く、破壊力が高い組みだ。 此処まで傷を負っていなかったのが奇跡であろう。ホムンクルスでもなければ。 「さぁ死ね! 悪は滅びろ! イェーガーズの名の下に正義を執行する!!」 勝った。 勝利を確信してセリューが高らかに己の正義に酔いしれ天へ叫ぶ。 彼女が最後に見たのは無数の初江飛翔体に囲まれ、焔に追い打ちを掛けられるブラッドレイの姿。 そう、最後に見た光景だ。 最後に見た光景だ。 派手に暴れていた戦場にたった一つの乾いた銃声が響いた。 「……え?」 正義に酔っていたセリューが急に真顔となり驚いた声を上げる。 呆気に取られたようなその声はブラッドレイ達全員の耳にこべり付いている。 この状況を説明出来る存在などホムンクルスを含めて誰一人としていない。 「な、んで……」 蹈鞴を踏むように後退していくセリュー。 その足取は今にも崩れそうな程に脆く不安定である。 その光景を見てウェイブは叫びながら走ろうとするがマスタングがそれを抑える。 暴れ狂うウェイブだが走れば爆心地へ赴くことと同義であり、マスタングは全力で彼を止めている。 無理矢理頭を大地に擦り付け、爆発に備える形となってしまった。 「セリュー!! ちくしょおおおおおおおおお」 セリューはやがて己の生命が行方不明になったような、生きている感覚を無くす。 身体をスタイリッシュに改造された時でも感じなかった生命の損失を感じていた。 放たれた弾丸はセリューの口内に着弾し、彼女の意識は闇へ消えようとしていた。 弾丸が飛び抜けていないことからまだ、セリューの口内には残っているのだろう。 ブラッドレイもウェイブもマスタングも銃を持っていない。 持っているとすれば自分の中に入っているショットガンぐらいだが、バッグの中に収納されている。 それに弾丸は散弾ではなく、単発。つまり銃そのものが違う。 ならば射手は新手の悪しか存在しない。 焔がミサイルへ到達する最中、セリューが見た光景はマスタング達の後ろで銃を構えているスーツ姿の男だった。 「悪は……こひゅ……こ、コロ……殺す……」 現実から逃げるように何度も後退していた彼女を待っていたのは――浮かぶ会場故に存在する奈落。 「セリュ……あ」 ウェイブが延ばした腕は遥か遠くであり、届くはずも無い。 彼が掴んだのは虚しいだけの空気であり、マスタングの焔がミサイルを爆発させていた。 【それからの物語】 爆発が大地を容赦なく抉り、崩し、砂煙が舞い、草地は跡形も無い有様となる。 逸早く身体を起こしたマスタングは周囲を警戒しながら近況を確かめる。 「何も見えん……ウェイブは居るようだが」 砂煙と爆風が吹き荒れ視界は全て埋められてしまい、自分が何処に立っているかも解らない。 解ることと云えば近くで倒れているウェイブぐらいだ。 「花陽くんも無事だといいが……目を離しすぎた」 マスタングが目を覚ましバッグから出て来た時には既にブラッドレイが襲来していた。 交戦中のため自らも参加したが、戦闘に参加していない小泉花陽に対する配慮が欠けていた。 戦地からは離れていたが、無事であることを祈るばかりだ。 何とも詰めが甘い。自分を嘲笑うように分析するマスタングだが物理的に詰めの甘さを体感する。 「本当に目を離し過ぎだ、ロイ・マスタング大佐」 「ブ……ラッ……」 人間離れしたホムンクルス――ラースの眼ならば声を出して居場所を自ら曝け出しているマスタングに接近するなど容易いことだった。 拳を腹に叩き込まれたマスタングは唾を吐き、戦意虚しくその意識を手放してしまう。 倒れるマスタングの身体を受け止めたブラッドレイは半信半疑で己のバッグにマスタングを収納し始めた。 明らかに容量を超えているが、するするとバッグに吸い込まれていくマスタングを見ていると広川の技術力に感心せざるを得ない。 「君には失望……とはいかないが本当に私の知っているマスタング君か確かめさせてもらうとしようか。 それに言っていた私や父上が死んだとは面白いことを言うではないか……まるで未来から来たようだ。 あの錬成は人柱の証……真理に触れているのが『未来らしい』。どうやら私が思っている以上に事態は大きく動いているようだ」 計画に必要な人柱。それに該当するマスタングが死ぬ前に確保しようとしていたが既に人体錬成を済ませていた。 ブラッドレイの知るマスタングは決して人体錬成を行わない人間だった筈だ。 マーズ・ヒューズの時にも行わなかった。 もしものためにホークアイ中尉を媒体に人体錬成を行わせる計画もあったが、それも確実とは言えなかった。 気になると云えば白井黒子から聞いたマスタングは腕を欠損していたはずだ。 だが彼の腕は健在であった。つまり賢者の石を使用した疑いがある。 そしてセリューが言っていた参加者の誤殺。 ブラッドレイの知っているマスタングとは異なる人物が彼のバッグに収納されていた。 「ガァ……マスタングを、返せ……!」 背後から奇襲を仕掛けたウェイブに対し、振り向き様に拳を放つブラッドレイ。 顔面に吸い込まれた拳はそのままウェイブを吹き飛ばした。 「筋は悪くない。 今の君は迷い過ぎだ……私が完全ならば此処で殺しているんだがね。流石に疲れたよ」 無数の爆発から無傷で生還するのは流石のキング・ブラッドレイでも不可能だった。 己に向かう爆発に付着する面積を最小限に抑え、ミサイルの嵐を掻い潜っていた。 元々雷光の錬金術師――御坂美琴との交戦で左腕が不完全な状態であった。 もう少しで本調子へ回復するが、現状無理な交戦を重ねるのは体力の無駄な消費である。 よってウェイブは此処で見逃す。 マスタングを回収しセリューを殺す当初の目的は達成出来たのだから。 無論若くして強さを持っているウェイブの未来が楽しみであると――大総統キング・ブラッドレイとしての思惑が在るのかもしれない。 この場所から去ろうとする前に迫る魔弾を剣で弾き返す。 「全くムードも何もあったもんじゃない」 「完全な不意を狙って余計な行動はしていないが、お前は怪物かキング・ブラッドレイ。銃弾を弾きやがって」 「その声――狡噛慎也君か。君は私よりも先に消えたから此方へ来ていないと思っていたよ。 それにしてもこの状況で私を狙ってくるとは君の眼は随分と人間離れしている」 「俺は人間だ。お前の居場所が解ったのは声だ」 狡噛慎也。 ブラッドレイが白井黒子達と遭遇する前に彼女達に接触していた男。 シビュラシステムと云う興味深い世界から来たと告げる執行官。警察官だ。 「頼まれたんだよ。お前を殺せと云う頼みじゃ無いのが残念だ」 「高坂穂乃果から救援でも求められたのだろう。 私もセリュー・ユビキタスを排除しようとしていたから助かった」 「食えん奴だ。最後の一番汚い仕事を俺に押し付けやがって。 お前ならあのままセリュー・ユビキタスを斬る事も出来た筈だ。何が狡噛慎也君、だ。 最初から気付いていたんだろう、お前みたいな奴は上手く人々に紛れ込める潜在犯だ」 「褒め言葉として受け取ろうかね。 君も私と会話して気づいている筈だが私はむやみに人を殺すつもりはない」 「それが最悪なんだ。お前はそうやって一般の目からは安全圏に居ようとする、質が悪いクソ野郎だ」 「はっはっは……君といい雷光といい渋谷――まぁいい。面白い若者ばかりだ――また会うことを楽しみにしているよ狡噛慎也君」 その発言を最後にブラッドレイは砂塵の中へ消えて行った。 狡噛慎也は後を追うことも無く、風が全てを流すのを待っていた。 砂塵が消えた時、キング・ブラッドレイの姿は無かった。 狡噛慎也の瞳に映るのはミサイルよって分断されてしまった大地。 奈落の向こう側には本田未央の知り合いである島村卯月の死体が見える。 しかし駆け付けるにはエリアを大きく迂回しなければ辿り着けない。 主にセリューとマスタングの戦闘により炎だの銃声だの響いてしまった今、このエリアに滞在するのは危険である。 ――恨むなら広川を恨め。 セリュー・ユビキタスでもない黒幕或いはそれと繋がっている広川を恨め。 セリューも世界と運命が違えば正義感に燃える正義の味方だったかもしれない。 巡り合わせが悪いと思え。それで納得出来ないかもしれないが死んでしまえば物語は潰えてしまう。 ――広川は俺が殺してやるさ。槇島と一緒に、な。 狡噛慎也は倒れているウェイブの傍に駆け寄ると息を確認する。 口元に手を持って行った結果、息はある。つまりウェイブは生きている。 「ウェイブさんをどうするつもりですか……狡噛さん」 恐る恐る近付いて来た小泉花陽が震えた声で狡噛慎也に話し掛ける。 セリューとブラッドレイの戦闘が激化しマスタングが加入した後に狡噛慎也は駆け付けていた。 彼が真っ先に取った行動は無力で震えていた小泉花陽の保護だ。 森の中へ彼女を逃し名前を聞く。――ビンゴだ。狡噛慎也は胸の中で当たりを引いたことを確信した。 高坂穂乃果の名前を出し小泉花陽の顔に笑みが宿る。 事情と彼女の無事を説明した狡噛慎也は元凶であるセリューを殺さんと動き出した。 遠目でも解る。ドミネーターが不要な程に悪と断定出来る存在だった。 焔と巨大な怪物とミサイルが吹き荒れるB級映画のような戦争を彼は弾丸一つで終わらせた。 「セリュー・ユビキタスの仲間だから殺す、と思っているのか? 心配するな。こいつを殺すつもりなんて無い、一緒に助けてやる――っと」 ウェイブの身体を担いだ狡噛慎也は空いている手で東を示し小泉花陽に訴える。 「言った通り高坂穂乃果達は音ノ木坂学院を目指している。俺達も行くぞ」 小泉花陽は高坂穂乃果の無事を確認する度に笑顔になっている。 大切な人が生きている――もう誰も失いたくない思いなんて抱きたくないから。 ――煙草は……やめておくか。 そして戦地を後にして彼らは音ノ木坂学院へ向かう。 【由比ヶ浜結衣@俺の青春ラブコメはまちがっている。 死亡】 【D-5/一日目/午前】 ※限りなく正午に近い。 ※東西を分けるように奈落が出来ました。 【キング・ブラッドレイ@鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST】 [状態]:疲労(大)、腕に刺傷(処置済)、左腕に痺れ(感覚無し、回復中) 、両腕に火傷 [装備]:デスガンの刺剣(先端数センチ欠損)、カゲミツG4@ソードアート・オンライン [道具]:基本支給品、不明支給品0~2(刀剣類は無し) [思考] 基本:生き残り司令部へと帰還する。そのための手段は問わない。 1:図書館に向かいタスクらと一旦合流する。 2:稀有な能力を持つ者は生かし、そうでなければ斬り捨てる。ただし悪評が無闇に立つことは避ける。 3:プライド、エンヴィーとの合流。特にプライドは急いで探す。 4:エドワード・エルリック、ロイ・マスタング、有益な情報、技術、帰還手段の心得を持つ者は確保。現状の候補者はタスク、アンジュ、余裕があれば白井黒子も。 5:エンブリヲは殺さず、プライドに食わせて能力を簒奪する。 6:御坂は泳がしておく。 7:マスタングが目を覚ましたら認識の齟齬について問い正す。 [備考] ※未央、タスク、黒子、狡噛、穂乃果と情報を交換しました。 ※御坂と休戦を結びました。 ※超能力に興味をいだきました。 【ロイ・マスタング@鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST】 [状態]:気絶、疲労(大)、精神的疲労(極大)、セリューへの警戒 [装備]:魚の燻製@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース、賢者の石(8割ほど消費)@鋼の錬金術師 [道具]:ディパック、基本支給品 [思考] 基本:この下らんゲームを破壊し、生還する。 0:キング・ブラッドレイに対処する。 1:治療した腕で錬金術が使えるか試す。 2:ホムンクルスを警戒。 エンヴィーは殺す。 3:ゲームに乗っていない人間を探す。 [備考] ※参戦時期はアニメ終了後。 ※学園都市や超能力についての知識を得ました。 ※佐天のいた世界が自分のいた世界と別ではないかと疑っています。 【狡噛慎也@PSYCHO PASS‐サイコパス‐】 [状態]:健康、左腕に痺れ、槙島への殺意 [装備]:リボルバー式拳銃(3/5 予備弾50)@PSYCHO PASS‐サイコパス‐ [道具]:基本支給品、ノーベンバー11のタバコ@DARKER THAN BLACK 黒の契約者、ライター@現実 [思考] 基本:槙島を殺す。そして殺し合いも止める。 1:小泉花陽とウェイブを連れて音ノ木坂学院へ向かう。 2:槙島の悪評を流し追い詰める。 3:首輪解析の為の道具とサンプルを探す。 4:危険人物は可能な限り排除しておきたい。 5:キング・ブラッドレイに警戒。 [備考] ※『超電磁砲』『鋼の錬金術師』『DTB黒の契約者』『クロスアンジュ』『アカメが斬る!』の各世界の一般常識レベルの知識を得ました。 ※黒、戸塚、黒子、穂乃果の知り合い、ロワ内で遭遇した人物の名前と容姿を聞きました。 【ウェイブ@アカメが斬る!】 [状態]:気絶、ダメージ(中)、疲労(中)、左肩に裂傷、左腕に裂傷 [装備]:エリュシデータ@ソードアート・オンライン [道具]:ディバック、基本支給品×2、不明支給品0~4(セリューが確認済み)、首輪×2、タツミの写真詰め合わせ@アカメが斬る!、ディバック(マスタング入り) [思考・状況] 基本行動方針:ヒロカワの思惑通りには動かない。 0:キンブリーは必ず殺す。 1:マスタングをブラッドレイから救う。 2:地図に書かれた施設を回って情報収集。脱出の手がかりになるものもチェックしておきたい。 3:工具、グランシャリオは移動の過程で手に入れておく。 4:盗聴には注意。大事なことは筆談で情報を共有。 5:セリューの仇を……取るのか? 6:穂乃果…… [備考] ※参戦時期はセリュー死亡前のどこかです。 ※クロメの状態に気付きました。 ※ホムンクルスの存在を知りました。 ※自分の甘さを受け入れつつあります。 【小泉花陽@ラブライブ!】 [状態]:疲労(中)、精神的疲労(極大)、右腕に凍傷(処置済み、後遺症はありません)、セリューへの恐怖 [装備]:音ノ木坂学院の制服 [道具]:デイパック×2(一つは、ことりのもの)、基本支給品×2、スタミナドリンク×5@アイドルマスター シンデレラガールズ スペシャル肉丼の丼@PERSONA4 the Animation 、寝具(六人分)@現地調達、サイマティックスキャン妨害ヘルメット@PSYCHO PASS‐サイコパス‐ [思考・行動] 基本方針:μ'sのメンバーを探す 0:狡噛慎也、ウェイブと共に音ノ木坂学院へ向かう。 1:西木野真姫を探す。 2:穂乃果と会いたい。 3;μ'sの仲間や天城雪子、島村卯月、由比ヶ浜結衣の死へ対する悲しみと恐怖。 [備考] ※参戦時期はアニメ第一期終了後。 ※イェーガーズ本部に穂乃果への書き置き(図書館に向かう)を残しています。 私はこの世界に生きている悪が嫌いだった。 生かしておいても何一つ世界に役立たない屑が嫌いだった。 私はいつからか正義を追い求めて軍に入り、悪を排除するために生きていた。 その中でオーガ――偉大な師に出会った。 でも、悪に殺された。 ナイトレイド、その名は一生忘れない。 生物帝具をも得た自分ならばナイトレイドにも負けない。 オーガさんの仇を取れる。嬉しくて仕方無い。 自分の両腕と引き換えにナイトレイド一人を殺した。 足りない。 自分には強さが足りない。 エスデス将軍の元、特殊警察イェーガーズが結成された。 自分以外強烈な色物集団だが、其処が自分の居場所だった。 笑顔になれる、自分が居ていい場所、帰っていい場所。 でもスタイリッシュが死んだ。 みんな私から離れていく。 悪は嫌いだ。 殺さなきゃ。殺さなきゃ。断罪しなきゃ。 何時だって人々は正義に憧れて、平和を夢見ている。 私は戦う力を持っている。だから悪を殺して平和を勝ち取るんだ。 だから。 「私、まだ死にたくないよぉ……なんでこんなことになっちゃったのかなぁ」 セリュー・ユビキタスの瞳から溢れ出る涙は、美しく、儚く、一人の女性として見せる表情だった。 神が居れば此処で彼女を助けるのだろう。 神は存在しないかもしれない。だが彼女を助ける――仲間は此処に居る。 それは奇跡だった。 全てが偶然の重なりによって生まれた奇跡である。 キング・ブラッドレイや狡噛慎也も気付いていないたった一つの奇跡がセリュー・ユビキタスに祝福を齎した。 由比ヶ浜結衣がショットガンを放った時、銃弾は全て島村卯月が受け止めた。 だが島村卯月は血を流しただろうか。否、流していない。 銃弾を喰らっても平気な身体である可能性は無い。島村卯月は普通の人間である。 何故彼女は血を流さなかったのか。 それは衣服の下に纏っていた帝具クローステールが銃弾から守ってくれたから。 ナイトレイドの一員であるラバックが使用していた糸の帝具が島村卯月を守っていた。 ラバックはクローステールを使い多様な戦法を用いていた。 罠を張ったり盾として使用したり、衝撃を吸収するクッションとしても用いていた。 クローステールの恐ろしい所は一回でも身体に付着すれば心臓まで辿り着き斬り裂くこと。 セリュー・ユビキタスは由比ヶ浜結衣を殺し島村卯月に近付いて触れていた。 この瞬間――クローステールはセリュー・ユビキタスの足に付着していたのだ。 狡噛慎也の銃弾に倒れたセリュー・ユビキタスは奈落へ落下した。 しかしその寸前まで口内を撃たれているのに彼女は言葉を発していた。 本来ならば声はおろか呼吸も出来ない筈だが彼女は何故言葉を発せたのか。 今更ではあるがセリュー・ユビキタスの身体全てが生身であるとは言い切れず、事実機械人間の側面を持っている。 残弾は全て没収されているが――彼女の口内には隠し銃が備わっているのだ。 狡噛慎也が放った銃弾は隠し銃に当たり、セリュー・ユビキタスは生きていた。 そして足に付着していたクローステール。 全ての奇跡が重なった今、奈落の底へ落ちる前に、彼女は島村卯月によって陸地へ引き上げられていた。 「私――生きている?」 「セリューさん……っあぁ……良かった、私、私……」 陸地に上がったセリューは自分が生きていることに戸惑いを隠せない。 走馬灯まで見たのだ、死を覚悟していた。 悪を断罪出来ない今後と自分の弱さに涙を流しなから死んだ筈だった。 近くに寄り添っている傷付いたコロを見て、更に涙を流す。 そんな彼女を待ち受けていたのは涙を流して自分を抱きしめる島村卯月だった。 抱きしめられながらも現実へ適応出来ないセリューは咄嗟に左目を触る。 既に血は止まっているが、何も見えないのだ。 キング・ブラッドレイに潰された左目――つまりこれは現実。 「ウヅキちゃん……ウヅキ……ちゃん……ありがとう、私死にたくなかった……っ」 そして現実を認識する。 同時に涙が溢れ出るのを堪え切れなくなり、感謝の言葉と共に全てを流す。 悪と云えどキング・ブラッドレイの強さは本物であった。 今まで対峙してきた悪の中で一番の強さであり、人間離れした力には恐怖を感じていた。 「私、セリューさんが生きていて本当に良かった……あぁ」 「ごめんね……心配かけてごめんね、私が弱くて悪を裁けないから」 二人の女性が互いに抱き合い互いに涙を流す。 行き過ぎた正義の成れの果てに待っていたのは断罪でも執行でも無く島村卯月だった。 セリューが会場で初めて出会った無垢な民。 戦う力を持たない彼女が自分を救うとは思ってもいなかった。 守るべき存在に守られてしまいセリューは己の弱さを感じるが、今は違う。どうでもいい。 島村卯月。 彼女は絶対に守り抜く。正義に誓い彼女を生きて還す決意を此処に固めていた。 「ウヅキちゃん、私に着いて来てくれる? これからたくさん危険なことが待ち受けているけど、ウヅキちゃんは」 漏れた言葉は正義の味方らしくない弱音だった。 戦いの果てに待っているのが自分を受け入れない世界だとしたら。 憧れのためだけに戦い続けた結果、最後に訪れるのが誰もいない世界だとしたら。 セリュー・ユビキタスは壊れてしまう。 キング・ブラッドレイによって自分の証言の偽りが明かされた時、この世から消えたいと思った。 事態は自分で変える事が出来ず、ウェイブとマスタングが味方にならなければ確実に死んでいた。 もう、死にたくない。 「私はセリューさんに着いて行くことしか出来ません。首が、生命を守ってください……。 勝手でごめんなさい、でも私にはセリューさんしか……凛ちゃんみたいに死にたくな……うぅ」 彼女達は互いを求め合い、互いを大切し生きている。 人間は弱い。一人では生きれない。けれど、心を閉ざしていれば一生独りで幕を降ろしてしまう。 寄り添い合って生きなければ人間は脆く崩れてしまう。 それはセリュー・ユビキタスも島村卯月も同じであり、彼女達は人間である。 その涙は造られたモノではなくて、本物の涙だ。美しいと称せる程に輝いている。 「ありがとうウヅキちゃん。私、必ず貴方を守るから、だから――私も頑張るから一緒に頑張ろうね」 「はい……はいっ」 残された彼女達が進む道は茨以上に尖っており、これから幾つもの死体を見るかもしれない。 だが進むしか無い。己の正義を信じて進むしか無い。 戦わなければ死んでしまう。セリューの行動と人格は強烈過ぎた。今更悲劇のヒロインを気取れない。 彼女達が進む先は悪が蔓延るあの場所。 島村卯月の友である本田未央が居るあの場所。 ――図書館だ。 【セリュー・ユビキタス@アカメが斬る!】 [状態]:疲労(絶大)、精神的疲労(大)、左目損失(止血済み)、切り傷(それなり) [装備]:日本刀@現実、肉厚のナイフ@現実、魔獣変化ヘカトンケイル@アカメが斬る! [道具]:なし [思考] 基本:会場に巣食う悪を全て殺す。 0:島村卯月を最後まで守る。 1:悪を全て殺す。 2:エスデスとの合流。 3:エンブリヲと会った場合、サリアの伝言を伝えて仲間に引き入れる。 4:ナイトレイドは確実に殺す。 5:図書館をへ向かい襲撃する。 6:都市探知機が使用可能になればイェーガーズ本部で合図を上げて、サリアを迎え入れる。 [備考] ※十王の裁きは五道転輪炉(自爆用爆弾)以外没収されています。 ※他の武装を使用するにはコロ(ヘカトンケイル)@アカメが斬る!との連携が必要です。 ※殺人者リストの内容を全て把握しました。 ※都市探知機は一度使用すると12時間使用不可。都市探知機の制限に気付きました。 ※他の参加者と情報を交換しました。 友好:エンブリヲ、エドワード 警戒:雪ノ下雪乃、西木野真姫 悪 :後藤、エンヴィー、ラース、プライド、キンブリー、魏志軍、アンジュ、槙島聖護、泉新一、御坂美琴 【島村卯月@アイドルマスターシンデレラガールズ】 [状態]:悲しみ、セリューへの依存、自我の崩壊(小)、精神疲労(極大)、『首』に対する執着、首に傷 [装備]:千変万化クローステール@アカメが斬る! [道具]:ディバック、基本支給品 [思考] 基本:元の場所に帰りたい。 0:セリューに着いて行く。 1:セリューと行動を共にする。 2:セリューに助けてもらう。 3:凛ちゃんを殺した人をセリューに……? 4:死にたくない。 5:未央ちゃんは図書館に居る……? [備考] ※参加しているμ'sメンバーの名前を知りました。 ※渋谷凛の死を受け入れたくありませんが、現実であると認識しています。 ※服の下はクローステールによって覆われています。 ※自分の考えが自分ではない。一種の自我崩壊が始まるかもしれません。 ※『首』に対する異常な執着心が芽生えました。 ※無意識の内にセリューを求めています。 時系列順に読む Back 災厄の紅蓮は東方に消え… Next No brand people 投下順に読む Back 再会の物語 Next 間違われた男 096 Future Style キング・ブラッドレイ 118 扉の向こうへ 098 正義の戦士たちよ立ち上がり悪を倒せ セリュー・ユビキタス 113 不穏の前触れ 島村卯月 由比ヶ浜結衣 GAME OVER ウェイブ 108 No brand people ロイ・マスタング 118 扉の向こうへ 小泉花陽 108 No brand people 096 Future Style 狡噛慎也
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後程編集.
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ジョジョの奇妙な冒険 魔法少女まどか☆マギカ 魔法少女リリカルなのは
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侵略!イカ娘 イカ娘 ポヨポヨ観察日記 ポヨ こちら葛飾区亀有公園前派出所 両津勘吉 パックワールド パックマン 俺の妹がこんなに可愛いわけがない 黒猫 妖怪ウォッチ ジバニャン ウィスパー コマさん コマじろう ロボニャン じんめん犬 人類は衰退しました 妖精さん 魔人探偵脳噛ネウロ 至郎田正影 Fateシリーズ ライダー アサシン ランサー アーチャー
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【名前】セリュー・ユビキタス 【出典】アカメが斬る! 【種族】 【性別】女性 【声優】花澤香菜 【年齢】20歳 【外見】 【性格】 【口調】 【備考】 以下、アニメキャラ・バトルロワイアルIFにおけるネタバレを含む +開示する セリュー・ユビキタスの本ロワにおける動向 初登場話 001 正義の名は此処に 死亡話 136 正義の味方 登場話数 10話 スタンス 危険対主催 現在状況 死亡 キャラとの関係(最新話時点) キャラ名 関係 呼び方 解説 初遭遇話 踏破地域 A B C D E F G H1■■■■■■■■2■■■■■■■■3■■■■■■■■4■■■■■■■■5■■■■■■■■6■■■■■■■■7■■■■■■■■8■■■■■■■■
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136 正義の味方 ◆BEQBTq4Ltk 満身創痍の空条承太郎、しかしその瞳は死んでいない。 見るからに瀕死体ではあるが、倒れる気配が全く感じられず、南へ向かおうとしている。 「すごい血が……」 その後姿を見る本田未央の口からありのままの状態が零れ落ちる。 彼が歩いた道は全て黒い赤に染まっており、見ているだけでも痛みを連想してしまう。 進むスタンド使いを止めたい気持ちもあるが、自分が声を掛けたところで何が変わると言うのか。 「待ちなさい、その傷で何処へ向かうつもりですか」 「急に目覚めたと思えばいきなり行動して……身体が保たんぞ」 セリュー・ユビキタスに続いてロイ・マスタングが承太郎に静止を掛ける。 一般人とは言い難いが彼らから見れば承太郎はまだ子供に当る年齢であり、できれば死地へ向かわせたくない。 常人ならば天に昇っても不思議ではない傷を負っているならば尚更である。 「気にするな……それに、お前は誰だ?」 声を掛けられようが承太郎は気にも掛けずに、己の意思を曲げようとしない。 少々言葉が荒くなるが、自分に静止を掛ける男に名を問うた。 「ロイ・マスタング……名簿ではそう記載されている」 「ロイ・マスタング……そうか、あんたが」 「何か聞いているのかね、私のことを」 「………………いいや、何でもねえ」 帽子を深く被り直しただけで、その先に紡がれる言葉は無かった。 承太郎が聞いていたマスタングの情報は主にセリューから流れていた。 その肝心な彼女に信用が置けなかったため、半信半疑ではあったが、気絶していた自分の近くに居たのだ。 きっとそれが彼の本質なのだろう。同行者である女性三人からも嫌にされている素振りは見えない。 人間火炎放射器、事実であろうが彼が聞いた件はいやな事件――そうだったのかもしれない。 「あの、承太郎さんは何処に向かうんですか?」 「俺は足立を追い掛ける……それだけだ」 未央は信じられない。その傷で何故動けるのか。 ステージに立つ彼女に血の鉄混じりの匂いや硝煙は関わりのない存在である。 けれどその存在達が人体にとって良い影響を与えないことなど解り切っているのだ。 承太郎が抱えている痛みを想像すると自分の身が崩れそうになる。何が彼をそこまで動かせるのか。 「その傷で追いかけても……どうして、死にそうなのに……っ。 病院に行かないと死んじゃうよ!? どうして、どうして皆そこまで――っ」 出会った人間も別れた人間も、誰も彼もが強かった。 単純な力の覇者から決して折れない心を持った芯の人間と様々に。 どうして彼らはそこまで強いのか。 殺し合いに巻き込まれて恐怖に怯えている自分が異端のように感じる。 承太郎とは面識が無い。けれど、未央の瞳は涙混じりになっている。 重症を背負いながら動く彼は、自ら死にに行くようにしか映らないから、見ていると心が錆び付いてしまう。 「関係ない、俺はもう行く」 言葉が響こうと承太郎は何一つ揺れ動くこともなく、足立の後を追う。 未央の言葉が届かなかった訳ではない。 イギー、花京院、アヴドゥルが死んでしまったこと。会場に招かれてからの足立との接触。 全てが絡み合ってしまい、退くに退けない状況である。元よりこの状況で黙る男ではないが。 去る承太郎を見ているだけの四人。 何故彼らは必死に止めないのか疑問に思う未央だが、答えは直ぐに返って来た。 「私達も追い掛けましょう。 足立は悪です、生かせる理由なんて無いし――ほむらちゃんの仇」 「承太郎……彼に何を言っても止まらないだろう。 あの傷で動くほどの意思を持っている男だ、私達は彼をフォローしなくては、な」 セリューは仲間であり、同志であった戦友暁美ほむらを殺害した足立を殺すために。 その意思を秘め、承太郎本人の意向を尊重した。彼の背中を見ても、言葉一つで止まる気配など存在しない。 マスタングもまた、彼の足を止める選択を選ばなかった。 あの類の男に何を言っても無駄なことは心得ているつもりだ。本人のやる気を削ぐことにしかならない。 かと言って黙って送る訳でもなく、自らも着いて行く。此処で追わなければ確実に後悔するだろう。 自分の目の前でこれ以上死人を出させてなるものか――焔の錬金術師にだって意地がある。 「しかしセリュー君。 私が承太郎君を追い掛けるから君は卯月君と未央君を……聞いてくれそうにないか」 「勿論です! 悪を滅ばすのが私の使命でありますからね。それにほむらちゃんの件だってある、引き下がるつもりはありません」 女性陣を連れて戦場に赴くのは少々どころか大きな危険を含んでしまう。 前にも小泉花陽や高坂穂乃果、白井黒子に……佐天涙子や天城雪子には辛い経験をさせてしまった。 今回は女性といえ、セリューに任せれる。ウェイブ達と一緒に行動していた時のような『何処に行っても敵が居る』状況では無いかもしれない故に。 だが、セリューの返答はマスタングの思い通りにはならなかった。 寧ろ、なってしまえば本当に彼女はセリューかと疑いを持ってしまう。 正義に囚われた彼女が悪を見逃すつもりが無く、その手で葬るのは簡単に予想出来る。 軽く息を吐いたマスタングは残りの女性陣に、行いたくはないが確認を取ることにする。 「今更だが私達はこれから――」 「私はセリューさんに付いて行きます! 其処がどんなにぐちゃぐちゃでも私は」 「しまむー……マスタングさん、私も一緒に行きます。何が出来る訳でもないけど……ううん、何でもないです」 そして一般人である彼女達も止まらなかった。 卯月はセリューに依存しており、彼女と別れる選択肢など最初から存在していないような即答。 未央もまた逃げることを選ばなかった。 言葉を詰まらせた時、視線の先には友である卯月の姿。 殺し合いによって変わってしまった彼女を放置するなど、友達の思いの未央が選ぶ訳もない。それに、 (何処に行ったて安全な場所何てもう……) 覚悟を彼女なりに決めている。 図書館の一時でさえ簡単に崩れ去ってしまった。 一緒に行動していたセリム・ブラッドレイは人に害なすホムンクルスだった。 頼れる大人だったキング・ブラッドレイも――安全な場所などもう存在しないようで、あったとしても信じられない。 「まったく……セリュー君、私達はこれから承太郎君を追い掛け彼を助ける――誰も死なずに」 「当然です、悪である足立透に正義の鉄槌を下し死んだ物達への手向けとします。卯月ちゃん達を守って」 「ありがとうございます! 島村卯月、頑張ります!」 「………………うん、私達も頑張ろうね! しまむー……」 響く和音はどこか不協を奏で、目に見えない部分で崩壊の予兆を感じさせる。 普段は星のように輝く未央の笑顔が満ちていない、欠けている、足りていない。 振る舞う輝きは無理やりに作成された擬似の星、真なる輝きとは程遠い煌めき。 知らず知らずのうちに侵食されていく心、それを止める防波堤は存在する筈もなく、腐敗の香りに毒される。 けれど止まることも出来ずに、これ以上犠牲を出さないために彼女達は承太郎を追った。 「少しだけ先に行っていてください、三分もしない内に追いつきますから!」 セリューを除いて。 ■ 外は外だ。 緑があり、青があり、黒がある。 比率としては青が薄いが奈落があるため仕方がない。 所々に燃え上がる赤は地図上でいう図書館か。 更に北の北方司令部では謎の氷が天へ連なっている。 東では電車が爆発し、西でも何かが起きるかもしれない。 そしてこの南でも動乱だって引き起こるだろう。 向かってくるのは瀕死の男。 続くように四人の集団が迫っている。 これでは偽りの情報を流しても意味が無い。本人が来てしまえば。 少しだけ嗤いが漏れた後、骸の少女が刀を握り動き出した。 ■ 「遅れてすいません……特に何も?」 「大丈夫ですよセリューさん、何もないです」 慌てて追い付いたセリューに卯月が声を掛ける。 そのやり取りを見つめるマスタングの視線はセリューに集まる。 特段、止めもしなかったが彼女は一体何をしていたのか。時間はそれほどかかっていない。 衣服にも作業を行った痕跡は無く、何をしたか見当も付かない。 危険人物の香りを漂わせる彼女はなるべく眼を離したくないが、これからも注意が必要であろう。 「マスタングさん、セリューさんは何をしてたのかな」 「分からん。私達に見られたく無いことは確かだが……まぁいいだろう」 未央も気になっている。 彼女にとってセリューの存在は異質である。 正義に盲信しているのもそうだが、島村卯月の存在が大きい。 セリューと出会ってから彼女の何かが壊れている、壊されているかもしれない。 何があったかは言葉でしか解らないが、心情までが解り切れる訳ではない。 前を歩くセリューと卯月、ついでにコロ。 殺し合いの最中ではあるが、何故か笑顔である。 煌めきに黒を交えた禍々しさを秘め、天使達の視界は何色に映っているのだろうか。 「未央ちゃん!」 突然振り向く卯月に対して、咄嗟の反応が出来ない。 「こんな状況でも私達、頑張りましょうね!」 言葉も出て来ない。 ましてや暁美ほむらが死んだ直後で、傷だらけの承太郎が前にいる時に。 「う、うん……そうだねしまむー」 どうしてそんな――綺麗な笑顔でいられるのか。 ■ 血を吐き出す。 線路の上に赤黒い鮮血がこべりつく。 東の方角へ走る電車が見える。 足立が乗っている可能性もあるが、足を止める理由にはならない。 アイツは――俺がぶっ飛ばす ■ 線路を歩き終えた承太郎の目の前に立ち塞がる白いコートを羽織った存在。 場所はひらけており、右手には民宿が見える。 「テメェ、邪魔するなら――」 握られている刀から敵対の意思を隠すつもりは無いらしい。 幽波紋を具現化させ、両者の力が一斉に大地を蹴る。 距離を詰め振られる刀を逸らすようにスタープラチナの右拳が当る。 白いコートはその場を大きく後退すると、弧を描くように足を動かし直接承太郎へ走る。 追い掛けるスタープラチナを間に割り込ませ、声と共に顔面を狙い拳を放つ。 「オラァ!」 吸い込まれていく拳を白いコートは身を低くすることで回避し、尚も承太郎に迫る。 対応しようと足を踏み込む承太郎だが、連戦による疲労と損傷からか身体が上手く動かない。 足取りが重く、踏み込むだけでも身体の内部から悲鳴が轟音を響かせてしまう。 「――ッ」 吐血。 溢れでた鮮血を気に留めることも無く、白いコートが距離を詰め刀を振ろうと――しかし。 承太郎との間に燃え上がる焔がそれを止める。 彼らの背後にはマスタングが錬成しており、白いコートは再度距離を取る。 「また会うとはな……ウェイブには悪いが私の手で葬ってやる」 忘れる筈もない。 忌々しい記憶が今でも残り続けている。あれはウェイブ達と合流した後の悲劇。 エンヴィーとキンブリーに踊らされたあの時に対峙している相手である。 マスタングの隣にいるセリューの表情が曇る。 話には聞いていた。でも信じたくなかった。 白いコートの存在を彼女は知っている。それもたくさん、一緒に過ごした時を忘れるなど有り得ない。 だから。思い出は消えない、消せない、消させない。 死んで暴れるなら――私が此処で生命を潰して終わらせてやるのが嘗ての仲間の役目。 「クロメ……今、私が開放してあげますからね」 帝具を冠する狗が彼女の腕を喰らい尽くす。 獰猛な牙を覗かせぐちゃぐちゃと肉を喰らう音を響かせ。 骨を噛み砕く音を響かせながら現れるは刀、宋帝刀。 左側から距離を詰め定石を無視して力が思うがままに刀を振るう。 風を斬り裂く音だけが響き、白いコートは左斜めに身体を移行させ回避していた。 「――っ」 その時、動きから白いコートが羽ばたいて落下する。 其処にはやはり、セリューが知っているクロメの姿が骸となって生の世界を彷徨っていた。 歯を食いしばる。 骸の力は帝具八房の能力であり、それはクロメの愛刀である。 それを盗んで彼女を殺害した男をセリューは許さない。キンブリーを許さない。 「コロッ!!」 黙っていれば自分が殺される。 刀の勝負でクロメに勝てる可能性など零だ。 迫る攻撃から逃れるように転がり込み、自分とクロメの間には力を発揮したコロが割り込む。 響きを上げた遠吠えと共に右拳を大地に叩き付ける。 周辺に地震を発生させるも、クロメは跳ぶことによってこれを回避。 着地した後、これを追撃しようと走りだすも急停止し、右から迫る拳を回避する。 スタンドの拳は嵐のように迫り、全てを回避するのは不可能と判断し腕を交差させる。 「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ――オラァ!!」 何発も浴びる度に後方へ追いやられ大地が削られていく。 一発一発が必殺級の拳を受け止める毎に骨が軋みを響かせ人体の崩壊を匂わせる。 骸で無ければ苦痛の表情を浮かべていただろうが、死者に痛みなど皆無。 最期の一撃は全力を振り切った拳。 大きく飛ばされるクロメであるが、受け身を行い、直ぐに走りだす。 対する承太郎だが、最期の一発と共に大きく血を吐いてしまい、大地に片膝を付けている。 守るように焔が燃え上がるも、クロメは大地を縦横無尽に走り込み、己の軌道を撹乱している。 殲滅力に関しては参加者の中でも上位に君臨する焔の錬金術師ではあるが、守るべき存在が近くにいる時、その真価を発揮することは出来ない。 強力な力故に、仲間を巻き込む恐れがあるから。 跳んだクロメの刀は無情にも承太郎の上半身を斜めに斬り裂く。 溢れ出る血は刀身に付着し、禍々しい妖気を放ちながら返すように切り上げ――これを刀で防ぐセリュー。 「下がってください!」 強引に弾き飛ばし、クロメの腹に蹴りを叩き込み彼女を大きく吹き飛ばす。 左腕で静止するように承太郎の前に出ると、再び刀を握りしめクロメに向かう。 勝てる気がしないが、逃げ出す必要も理由もない。 鍔迫り合いが発生するが簡単に終わり、左肩が八房に貫かれる。 苦痛の表情を浮かべるが、やっと好機を掴んだ――歪んだ笑顔が降臨する。 「捕まえた――逃がさないッ!」 抜こうとする八房を強引に掴み、行動を抑制すると空いた片手で刀を握り締める。 ゆっくりと上に、すると次は素早くお返しと謂わんばかりに心臓を一突き。 「まだまだァ! 死ねええええええええええええええええええええ」 刺しても安堵することは無く、肉を抉るように刀を振り回す。 人体の臓器を潰し、血管を斬り裂き、生命を削る。 骸相手に生半可な戦い方では自分が負けてしまう。嘗ての仲間だろうと遠慮することなど――無い。 その戦闘を眺める未央は口を抑え、奈落の下へ溢れ出る異物を落とし込んでいた。 鮮血には慣れてしまった自分が居る。それだけでも不快感が身体を走り回るというのに。 続いて実際に人間が斬り裂かれる瞬間を、人体が喰われる瞬間を、人体の臓器が潰される音を聞いてしまえば。 壊れてしまう。人間としての大切な何かが壊れてしまう。 目尻に涙を這わせ、それでも絶望に屈しないために、気を手放すことは絶対にしない。 セリューが、承太郎が、マスタングが戦っている。 自分が動けなくなり、足を引っ張ることなんて絶対にしない。 タスクも、狡噛も、新一も、アカメも、ウェイブも――他の参加者達だって今も戦っている。 自分だけ。 自分だけが逃げる訳にはいかない。 だけど。 (しまむーは平気なんだね) それでも、認めたくない現実だってある。 「退け! セリュー!!」 掌を合わせたマスタングが叫ぶ。 動きを止めたならば好都合だ。最大火力で焼き尽くすまで。 一般人である未央と卯月には見させたくない光景だが、躊躇すれば死者が出るかもしれない。 酷ではあるが、我慢してもらうしかあるまい。 殺し合いに巻き込まれた時点で平穏な時を一生過ごそうなど理想の果てくれに漂う蜃気楼だ。 安地など、約束の大地であるカナンなど存在しない。 「――ッ、任せましたよマスタング!」 刀を引き抜く前に全体重を付加させ、クロメの左足まで強引に斬り裂く。 行動を可能な上まで制限させた上で、刀を引き抜き大きく後退するセリューはそのままコロの背後に回る。 圧倒的な焔の近くに居れば、己も焼けてしまう。 「お前の仇は私達が取る――此処で眠ってくれクロメッ!」 弾かれた指と共に錬成される焔は骸を包み込む。 火葬――冗談にもならない不謹慎な言葉ではあるが、死体を葬ることに変わりはない。 ウェイブが見れば何と言うか。 彼ならば全てを受け止めてくれるだろうが、心の傷は癒やされないだろう。 この時、誰もが気付かなかった。 クロメが刀を投げ捨てていたことを。 民宿の二階からキンブリーが嗤っていたことを。 そして焔と共に、クロメに仕込まれた悪魔の火薬が一帯を焦土へと叩き堕とす。 「ハハ――ハハハハハハハハハッ! 何とも美しい爆発ではありませんか!」 荒れ果てた大地の上で一人の悪魔が嗤い、その声が嫌でも響いてしまう。地に刺さった死神の刀を引き抜きながら。 転がる首輪が彼の足に当たり、止まる。機会的な金属音が小さい静寂を奏でる。 「あの爆発にも耐えるとは……中々どうして面白い」 首輪の耐久力に興味を示すも、更に興味を惹く存在が在る。 「貴方も」 口内に溜まった血を吐き出した学生は側に幽波紋を立たせ、悪魔を睨む。 「貴方も」 爆発に対して咄嗟に大地の壁を錬成し、己を含み後方に居る一般人をも守った男が、因縁の錬金術師を睨む。 「貴方も」 一番爆発に近かった彼女は帝具に守りを取らせ、その帝具も傷こそ負えど人造生命体のように傷を回復させ、仲間の仇を睨む。 「素晴らしい! よくも此処まで立ち上がれる……その意地、敵ながら尊敬させてもらいますよ」 腕を広げながら立ち上がる参加者に賛辞を送る紅蓮の錬金術師。 しかしその言葉を誰も受け取らずに、最初に動いたのはセリューだった。 コロに腕を喰わせ鉄球を強引に振り回し首からを上を吹き飛ばそうとするが骸の愚者に止められてしまう。 「――――――――――――――――テメェッ!!」 全てを悟った承太郎は死に体に鞭を振るい、気力がある限り身体を動かす。 飛ぶスタンドの拳は銀の弾丸よりも早く、強く、信念が篭っている。 この男は殺す。 イギーを殺したこの男を――殺す。 「やはりこの能力は貴方と一緒でしたか」 イギーの持つビジョンに興味を示していたキンブリーは気になっていた。 民宿から戦闘を眺めていた時、承太郎の能力と似ていることに。 天城雪子のペルソナとも似ていたが、どうやら本質は此方らしい。 「亡き友のために拳を振るいますか」 「そんな飾った言葉で気取るつもりはねぇ……テメェが俺に売った喧嘩を買うだけだ」 悪魔の囁きを掻き消すように振るわれた拳は愚者を崩壊させる。 砂塵が吹き荒れ蜃気楼のように消える――最初から狙いはスタンドの本体であるイギーのみ。 「――――――――――――――じゃあな、イギー」 叩き落とされた拳はなるべく身体を破壊しないように、心の臓だけを止めるように放たれた。 骸となって世界を彷徨う仲間に出来ることは、終わらせること。 長い旅を共にした仲間との別れが――世界との別れが訪れる。 光り輝くイギーの身体。 発せられる悪魔の煌めきは世界を赤く包み込み爆の波動。 クロメと同じように身体に細工を施された骸の罠が発せられる。 セリューは爆発から逃げるように、承太郎を救えない現実を噛み締めながら後退する。 その瞬間、承太郎の表情は憎しみによって歪められていた。 それと同時に、自分の死を悟ったのか――何処か後悔を浮かべているようで。 「残念――ただの発光でした」 「テメェ……」 気付けば承太郎の心臓は悪魔が握る八房に貫かれていた。 もう吐く血も残っていない。 コロが卯月と未央を乘せ西へ移動している。 「そんな、私だけ逃げるなんて……セリューさん!」 「大丈夫ですよ卯月ちゃん、だって私は正義の なんですからね!」 「承太郎さん……承太郎さんっ!!」 未央の叫び声が聞こえるが、承太郎は思うように声を発せない。 少々適当にあしらってしまった彼女だが、心配してくれたことに変わりはない。 (生きろ) それだけ。 口を動かし伝わるかも解らない合図を送る。 それを感じ取ったかは不明だが、彼女は泣いていた。 続いてマスタングは焔を錬成し、キンブリーを焼こうとするも愚者に防がれている。 殺したかと思えば心臓もフェイクであり、悪魔に完全に嵌められてしまった。 セリューは鉄球を振るうも悪魔が錬成した大地の壁に阻まれてしまう。 故に承太郎を救える人間は存在しない。最も助かる傷ではない。 「貴方の強さは本物だ……是非とも私の役に立ってくれるでしょう」 八房の能力は殺した人間を骸と化し己の駒とすること。 刀を引き抜けば承太郎は絶命し、キンブリーの下僕と成り果てる。 だが、 「抜けない……ッ!?」 黙って死ぬ程、空条承太郎という人間は大人しくない。 今でもキンブリーを殺さんと絶望的な状況ではあるが、その瞳は死んでいない。 スタープラチナが刀身を握り締め、動かさないように固定している。血を流しながら。 (生きてるのはジジィだけか) イギーも、花京院も、アヴドゥルも死んでしまった。 会場に生きている旅の仲間はジョセフ・ジョースターのみ。 ポルナレフも生きているだろうが、会場に居る仲間はジジィだけである。 (DIOの野郎……) 志半ばに倒れてしまう自分が情けない。 だが、黙って死ねる訳もない。 今、出来ることを――。 「テメェを殴らねぇと死んでも死にきれねぇ」 放たれた最期の一撃は星の煌めきのように儚い。 星屑を纏う拳はキンブリーの右頬を捉え、彼を大きく吹き飛ばした。 それと同時に。 空条承太郎の身体から八房が抜かれ――今此処に一人の男が死んだ。 承太郎の死を目撃したマスタングはなりふり構わず焔を錬成し、一つの終わりを告げる鐘を鳴らすべく修羅となる。 「君には助けられたこともある」 迫る愚者の猛撃を無様に身体を大地に這いつくばるように回避し、焼き払う。 「君が居なければ私もウェイブも、白井君達も死んでいた」 更に掌を合わせ、顔を歪めるイギー目掛け最大火力を錬成し、指を鳴らす。 「礼を言う。君のおかげで私達は今も生きている――さらばだ、本当にすまない」 焔の発現を背後に、マスタングは振り返らずキンブリーの元へ走る。 躊躇いも、戸惑いも、情けも無い。 嘗ての仲間だろうと、命の恩人であろうと心を修羅にしたマスタングはイギーを完全に消し去った。 呆気無い。何とも呆気無いがこの火力こそが焔の錬金術師の代名詞であり、彼の罪であり、業であり、力であり、生き様である。 掌を合わせ、飛ばされた悪魔を焼こうとするも視界が暗くなる。 太陽は昇っている。視界を遮るはスタンドの拳。気づいた時には彼もまた吹き飛ばされていた。 「遅かったか――承太郎ッ!」 迫るスタープラチナに対応しようと焔を錬成するも、簡単に回避されてしまい距離を詰められる。 スタンドの背後に燃え上がる焔が悪夢を演出させ、拳がマスタングに迫る。 これを腕で受け止めるも、近接戦闘が得意ではないマスタングにとってこの状況は圧倒的に不利だ。 焔を錬成しようにも拳の応酬によって錬成する時間も、呼吸をする時間さえも惜しい。 腕を交差させラッシュに耐えるも――限界が訪れる。 腕を上にかちあげられてしまい、無防備となった身体に無数の拳が吹き荒れる。 人体から骨が悲鳴を上げ、内部では臓器が危機の信号を体中に響かせる。 空条承太郎、骸と化した今でもその能力は衰えない。 ■ コロから降りた未央と卯月は線路の上から爆発が絶えない戦場を見つめ、戦っているであろう彼らの無事を祈る。 承太郎の死を以って訪れた別れの時。 あの場所に戦えない自分達が居れば、足手まといになるのは目に見えている。 今も、セリューにとって大事な相棒であるコロを奪っているのだ。居場所なんて無い。 コロは主であるセリューの元へ向かうため、此処を離れる。 「承太郎さん……最期に『生きろ』って……自分があんな状況で私に『生きろ』って」 死者に明日を夢見る資格は無い。だが生きている人間は明日を体感する権利を持っている。 生者には死者に出来ない夢を追う資格がある。承太郎の真意は不明だが、生きろと言われたらからには生きるしか無い。 タスク達も生きている。 彼らが頑張っているならば自分も頑張らなければ、腐っている訳にはいかない。 「しまむー、私達は絶対に生き残ろうね。生きてみんなのところに――」 「へ? あっ、そうですね……生きて帰ってもう一度みんなで……ニュージェネレーションで……にゅー……?」 それはもう取り戻せない日常。 卯月が紡ぐ言葉に未央の瞳には涙が浮かぶ。 心が壊れていようが、目の前に居るのは未央が知っている島村卯月だ。 「未央ちゃん何で泣いて……あれ、私も泣いてる……これって何なんでしょうね凛ちゃん……凛ちゃん?」 ニュージェネレーション。 あの輝きを卯月の口から聞けたことに未央は心の底から嬉しがった。 もう聞けないと、もう私の知っている島村卯月は存在しないかもしれない。 そんな不安が、再開してからずっと心の青空を雲が覆っていたのだ。 「どうしてなんでしょうね……助けてください、セリューさん……」 それでも、やはりあの頃の島村卯月は――。 【C-8/一日目/午後】 【島村卯月@アイドルマスターシンデレラガールズ】 [状態]:悲しみ、セリューへの依存、自我の崩壊(中)、精神疲労(極大)、『首』に対する執着、首に傷 [装備]:千変万化クローステール@アカメが斬る! [道具]:ディバック、基本支給品 [思考] 基本:元の場所に帰りたい。 0:セリューに着いて行く。自分の価値を失くしたくない。 1:セリューを待つ。 2:セリューに助けてもらう。 3:凛ちゃんを殺した人をセリューに……? 4:死にたくない。 [備考] ※参加しているμ sメンバーの名前を知りました。 ※渋谷凛の死を受け入れたくありませんが、現実であると認識しています。 ※服の下はクローステールによって覆われています。 ※自分の考えが自分ではない。一種の自我崩壊が始まるかもしれません。 ※『首』に対する異常な執着心が芽生えました。 ※無意識の内にセリューを求めています。 ※クローステールでウェイブ達の会話をある程度盗聴しています ※ほむらから会場の端から端まではワープできることを聞きました。 【本田未央@アイドルマスター シンデレラガールズ】 [状態]:健康 深い悲しみ [装備]:なし [道具]:基本支給品、不明支給品0~2、金属バット@魔法少女まどか☆マギカ [思考・行動] 基本方針:殺し合いなんてしたくない。帰りたい。 0:マスタング達を待つ。 1:しまむー… 2:セリューに警戒。 3:生きる。 [備考] ※タスク、ブラッドレイと情報を交換しました。 ※ただしブラッドレイからの情報は意図的に伏せられたことが数多くあります。 ※狡噛と情報交換しました。 ※放送で呼ばれた者たちの死を受け入れました ※アカメ、新一、プロデューサー、ウェイブ達と情報交換しました。 「随分と血だらけですが大丈夫ですか?」 「此方の台詞だ、君こそ私に任せてそろそろ倒れたらどうだ?」 背中合わせの英雄の身体は満身創痍、限界を迎える直前である。 キンブリーの錬金術によって被害を被ったセリュー・ユビキタス。 承太郎のスタンドによる攻撃によって人体に深刻な損傷を負ったロイ・マスタング。 対する悪魔達は英雄よりかはずっとマシな状態である。 キンブリーの傷と云えば承太郎の拳による攻撃ぐらいであり、今も嘲笑っている。 承太郎は何度かマスタングの焔を喰らったものの、直撃は受けておらず、骸ながらに生命を維持している。 このどうしようもない状況で、英雄は眼前の敵だけは此処で殺さんと覚悟を決めている。 「さぁどうしますかね。 私は残念ながら貴方達を逃がす程のお人好しではない」 「そんなことが出来る悪など存在しない、貴様は私が此処で葬る」 「口だけは達者な女性だ……似合わない鉄球では私を捉えることも出来ない」 「ならば私の焔はどうだ? 悪魔の皮を剥がしてやる」 不意打ちのように迫る焔に対し、キンブリーは舌打ち共に大地を隆起させる。 盛り上がった土で焔を受け止め、お返しと謂わんばかりに彼らの足元へ爆発の錬成の閃光を走らせる。 「飛べ!」 「無茶を言わないでください!」 散開し爆発を回避した彼らは相手を取り替えて敵に向かう。 承太郎に対して鉄球を振るうセリューだがスタープラチナに鎖を掴まれてしまう。 行動を塞がれてしまうが、この未来は読めていた。 「斬り裂かれろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」 腕を強引に振り回し、スタープラチナを中心に鎖を回転させる。 すると鎖はスタンドを巻きつけ、その場に封じ込めてしまう。それでも尚動きを止めない。 更に回転させ鎖で引き千切ろうとするも、星屑のスタンドパワーは想像を絶する。 「まさか――鎖を自力で破壊した!?」 己の身体を開放させ鎖を解いたスタンドはセリューに向かう。 お返しと謂わんばかりに無慈悲にも最強の拳が彼女の顔面を捉え、大地に転がせる。 「セリュー!」 「余所見をする余裕があるとは流石ですねぇ!!」 「しまっ――」 吹き飛ばされるセリューに気を取られたマスタングの隙を狙い、紅蓮の錬金術が彼に迫る。 大地ごと爆発物に錬成され、防御も間に合うはずもなく、無慈悲に爆発が轟いてしまう。 一応、錬成は間に合ったものの、直撃を避けるの意味合いでありマスタングの左腕は大きな火傷を覆ってしまった。 奇しくもセリューと同じ場所に飛ばされたマスタングは彼女が生きていることを確認して、立ち上がる。 其れにつられて――か、どうかは不明だがセリューも立ち上がり、眼前に一人の悪魔と骸になってしまった仲間を睨む。 「またこんな状況だが――私に任せて逃げる選択肢を選ぶつもりはないか」 マスタングの提案は自分一人を犠牲にしセリューを逃がす、自滅の誘い。 しかし彼女はこれを受けずに、口元を緩ませてあろうことが耳を疑う返しを行った。 「その言葉そっくりそのままお返しします」 呆気に取られるマスタング。 どうも天城雪子や白井黒子、アカメといい強気な女性ばかりが戦っているようだ。 だが、嫌いではない。思えばアメストリスで周りにいた女性も強い女性ばかりである。 男である自分がこんなところで情けない言葉を吐けば中尉に撃ち殺されてしまう。 「仕方がない。ならば打開するしかあるまい――この状況を」 キンブリーと承太郎の厄介な所は組み合わせではない。 錬金術によって広範囲攻撃を行うキンブリーとスタンドによる圧倒的な近接戦闘力を保有する承太郎。 言葉や表現は違えどマスタングとセリューも似たような組み合わせである。 前者と後者の大きな違いと云えば『傷』である。 連戦によって大きく浪費しているマスタング達と、然程浪費していなく骸も持っているキンブリーでは体力に大きな差が発生する。 状況を打開するには焼き殺すのが手っ取り早いが、そう上手く行く筈もない。 「貴方達は大分追い詰められていますが――ああそうだ。 先程逃げた彼女達も今頃私達の仲間によって……クク、死んでいるかもしれませんねぇ?」 『貴様ァッ!!』 セリューとマスタング、二人の声が重なり一斉に走りだす。 マスタングは焔を錬成しキンブリーを焼き殺そうとするも正面からの錬成では簡単に防がれてしまう。 「甘いッ!」 ならばそれを上回る火力で圧倒的に焼き尽くせばいい。 大地の錬成の守りを崩しキンブリーの上半身を焼くも、致命傷にはならない。 寧ろ、此処まで酷使しているマスタングの身体が悲鳴を上げ、その場に膝を落としてしまう。 追撃を行おうと飛び出したセリューが鎖を振るいキンブリーに打撃を与えようとする。 しかし骸である承太郎のスタンドが割り込み、拳で弾かれてしまう、ならば。 「何も帝具だけが私の武器ではないッ! 斬り裂かれろよおォ!!」 懐から日本刀を取り出しスタープラチナを斬り裂くセリューだが、右腕しか捉えられない。 しかしそれで充分であり、その場で固まるスタンドを通り抜けキンブリー目掛け走る。 「学習しない人達です――ッ!?」 いい加減飽きたと謂わんばかりにセリューを殺そうとするも、キンブリーはその場から緊急回避。 上空から此方へ降下してくるコロの奇襲を回避すると、転がり込み承太郎の近くへ移動した。 「この狗が来たということは誰も彼女達を守ることは出来ない」 彼女達は セリューが 「心配するな 守る」 卯月ちゃん達はマスタングが 虚しく響くだけの音を誰も拾わない。キンブリーでさえも嗤わずに彼らを見つめている。 沈黙を破ったのはセリュー、強引にマスタングのバッグに何かを捩じ込むと彼の背中を叩いた。 「私にはコロが来てくれた、でも卯月ちゃん達を守ってくれる人は誰もいません。 だから、此処は私に任せてマスタングさんは先に行っていてください。私も直ぐに追いつきますから!」 「その言葉を私に飲み込めと――君に此処を託して一人で逃げろと言うのかッ!」 「キンブリーが言っていることだって嘘の可能性もあります。 コロが敵に気付かずに此方に来る何てあり得ません。だから念の為にです。 それに――マスタング、卯月ちゃんを救えるのは貴方しか今は頼れない――コロォォォォオオオオ!!」 マスタングの返答を無視して好きなだけ言葉を紡いだセリューはコロにその身体を喰らわせる。 全く曇りのない瞳は絶望的な状況であろうと、悪を滅するために、その身を危険に陥れようと勇猛果敢に振る舞う。 その覚悟を見てマスタングはまた届かない言葉を並べるのか。違う。 一度決めた覚悟は簡単に崩れない。故に覚悟。 鋼の錬金術師も、アームストロング姉弟も、中尉も、あのブラッドレイだって、キンブリーでさえも覚悟を持ち合わせている。 ウェイブも、白井黒子も、高坂穂乃果や小泉花陽だって、それに空条承太郎――セリュー・ユビキタスもだ。 己の人生を、覚悟を決めた人間に水を差す行為は茶番だ。その人間に対する愚かな行為である。 一度決めたその決意を、咎める権利など他人は持っていない。 けれど。 「私も直ぐに追い付く――生きろ、セリュー・ユビキタス」 「勿論だ、何せ私は正義の ! 悪を滅ぼすまで死ぬことなんてあり得ない!」 コロに全身を喰わせたその身体は十王の裁きを組み合わせた殲滅力を限界にまで高めた悪を滅ばす覚悟の現れ。 ミサイル、ライフル、キャノン砲、ショルダーランチャー……様々な銃火器を人体に宿わせる。 硝煙の香り、それに似合わない少女は敵を殺すべく己の身体を機会的に改造し、明日に手を伸ばす。 「空条承太郎、セリュー・ユビキタス……君達が居なければ私達は全員死んでいたかも知れん」 走り去るマスタングは振り返ることもせずに、未央達の元へ急ぐ。 キンブリーの言葉が正しければ彼女達の生命が危ない、もうこれ以上誰も死なせるわけには行かない。 例え全てが悪魔達の掌の上で踊らされていようと――生者は歩みを止めるわけにはいかない。 【C-7・西/一日目/午後】 【ロイ・マスタング@鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST】 [状態]:疲労(大)、精神的疲労(大)、迷わない決意、過去の自分に対する反省、全身にダメージ(大)、火傷、骨折数本 [装備]:魚の燻製@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース [道具]:ディパック、基本支給品、錬成した剣 即席発火手袋×10 タスクの書いた錬成陣のマーク付きの手袋×5。暁美ほむらの首輪、鹿目まどかの首輪、万里飛翔マスティマ [思考] 基本:この下らんゲームを破壊し、生還する。 0:殺し合いを破壊するために仲間を集う。もう復讐心で戦わない。 1:未央達の安全を確認した後、セリューの加勢に入る。 2:ホムンクルスを警戒。ブラッドレイとは一度話をする。 3:エンヴィーと遭遇したら全ての決着をつけるために殺す。 4:鋼のを含む仲間の捜索。 5:死者の上に立っているならばその死者のためにも生きる。 [備考] ※参戦時期はアニメ終了後。 ※学園都市や超能力についての知識を得ました。 ※佐天のいた世界が自分のいた世界と別ではないかと疑っています。 ※並行世界の可能性を知りました。 ※バッグの中が擬似・真理の扉に繋がっていることを知りました。 風が吹く。 覚悟を決めた女に積まれるは男の浪漫を詰め込んだ圧倒的殲滅壊滅力保有銃火器。 目の前には悪魔と骸と化した存在。 葬るには絶好の獲物であり、己が正義であらんことを証明するための礎となってもらう。 狙いは定める必要も無い。この広範囲武装の前に人体など気にする必要もない。 「さぁ! 遂にお前を殺す時が来たぞキンブリー! 我がイェーガーズの仲間であるクロメを! それにこの場で殺した空条承太郎を殺した罪――死んで償うがいい!!」 己を奮い立たせる短歌は亡き友へ向けた開戦の祝砲。 死んだ人間はもう戻らない。嘗ての師であるオーガやDr.スタイリッシュ、悪に殺された両親と同じように。 クロメも戻らぬ存在となってしまった。 その仇が目の前に居る。 マスタング、承太郎と三人掛かりで臨んだ戦いも今じゃ一人しか残っていない。 居るのは相棒のコロだけ。けれど。 (私には待ってくれている人が――居る) この会場に来て最初に出会った参加者の島村卯月。殺しには無縁の無垢な少女だった。 最初は守るべき存在だったが、知らない間にセリューもまた、卯月に心を許していた。 この生命は最早一人の物ではない。帰りを待ってくれる者のためにも死ぬ訳にはいかないのだ。 「だって私は正義の味方だから」 憧れであり、目標であり、己を指す言葉を引き金に。 悪を滅ぼさんとするセリュー・ユビキタス全力全開の攻撃が始まった。そして――――――――――。 民宿だけが奇跡的に残された大地で立ち上がる人間は一人しかいない。 圧倒的焦土と成り果てた大地で生命を噛み締める男は一人しかいない。 焦土の彼方此方には嘗て人間を構成していたと思われる肉片が落ちており、辺りには腐臭が漂う。 奇妙な程までに頑丈な首輪が転がっており、刻まれている名前はイギーと空条承太郎。 骸と化したスタンド使いは文字通りこの会場から消え、正真正銘に死んだこととなった。 吹き荒れる爆炎、轟く銃声、全てを赤に包む爆風、崩壊する世界。 この世の終わりとも思える音を世界に響かせた一瞬の輝きも終われば、立ち上がるのは悪魔だけ。 迫る銃火器を己の錬成で防ぎ、その間にセリュー・ユビキタスにも爆発の錬成を迫らせる。 己の錬成だけで防ぐのは不可能であり、ならば新たな盾が必要となる。 そこで新たに調達した骸である承太郎を肉壁にすることにより、キンブリーはその生命を散ずに済んだ訳である。 嘗て承太郎と呼ばれた存在を表す記号は最早、首輪しか残っていない。 しかし全てを防げた訳ではない。 キンブリーも全身に重症一歩手前の傷を追うこととなり、夥しい数の火傷が上半身に浮かんでいる。 それがセリュー・ユビキタス最期の証であり、悪魔キンブリーに一矢報いたことを表す。だけど之で終わる彼女では無い。 「まだ生きていますか……しぶとい人だ」 「此方の台詞だ……クソ、悪は絶対にころ……す……」 下半身を爆発によって吹き飛ばされてしまったセリューは当然のように上半身しか存在しない。 身体の断面から想像出来ない程の血液が漏れだしており、彼女周辺の一帯だけは赤い池が形成されている。 その瞳はまだ死んでいない。 しかし残念ながらそれ以外が死んでおり、事実上キンブリーを殺す術を持ち合わせていない。 彼女に近づいたキンブリーが見下すように、 「正義の味方――響きは良いですが死ねばそれで終わりですよ」 彼女が攻撃をする前に呟いた記号を彼は聞き逃していなかった。 何故、あの瞬間にこの言葉を響かせたかは不明だが、きっとセリュー・ユビキタスの存在を表す記号なのだろう。 色や形は違えど、鋼の錬金術師と同じような、芯を持った人間であり、その身を酷使していたに違いない。 敵であろうと、相容れない存在であろうとその姿にはある種の敬意すら抱ける。 「私が死んでも、正義が悪に屈したことにはならない……悪は必ず滅び……っ」 言葉に耐え切れなくなり身体から血液が溢れ出る。声を発する動作すらまともに行えない程、彼女は死に体である。 悪を滅ぼす、殺す、断罪する。 その目標だけを捧げてきた一人の英雄の詩が紡がれなくなる瞬間が近付いている。 「悪ですか……社会不適合者は確かに悪ですが貴方にとって悪とは……いえ、なんでもありません」 悪の美学、或いは定義を聞こうとするキンブリーだが、最期まで言葉を紡がない。 これから死んでゆく彼女に語らせても、得るものも、失うものも何もない。 世界を去る正義の味方の最期ぐらい彼女の言葉を紡がせてあげようではないか。 「正義は必ず勝つ……じゃなければ市民が、皆が安心して暮らせない……だから、私は――ッ!!」 カチリ。 遂にその時がやってくる。 終わりを告げる針が世界を動かす。 例えこの身が朽ち果てようと。 私は――――――悪を断罪する。 「悪は必ず滅びる! 私が断罪する! キンブリーィィィイイ!! 貴様に訪れる明日など存在しない!!」 息を吹き返したように叫ぶセリュー。口から血が吐き出ようが関係ない。 此処で悪を一人でも殺せるなら本望――かもしれない。断言は出来ないだろう。 けれど彼女の使命は一つ果たされる事になる。それにクロメの仇も取れるだろう。 「この音……まさか貴方は自分ごと――ッ!」 「五道転輪炉……私の脳内に施された爆弾はDr.スタイリッシュがくれた最期の――正義」 セリューの言葉を聞いたキンブリーの表情が一転して曇り、その場から離れようとする。 針の音が聞こえた時、全てを理解した。 絶大な生命力もそうだが、彼女は自分を引き止めるために言葉を紡いでいたのだろう。 それに圧倒的な火力は此方の体力を可能な限りまで削り、大地を破壊し確実に追い込むためだったのかもしれない。 (一杯食わされたという訳ですか……チィ!) 「今更逃げたって無駄だぁ! 貴様は此処で死ぬんだよキンブリーィィィィィイイイイイ!!」 錬成で防ごうにもあの圧倒的火力を人体に背負った存在の爆発から守り切れる自信が無い。 可能な限り離れようとするが――一か八かの賭けに出るしか無いだろう。 「誰もいなくなっちゃった……」 残されたセリューの周りには誰もいない。 常に側に居てくれた島村卯月は別の場所へ避難している。もしかしたら彼女は既に――いいや、それはない。 マスタングが向かっているからきっと大丈夫だろう。 今一つ信用が置けない彼ではあるが、ウェイブが信頼している男でもある。信用と信頼は違うが上に、きっと卯月達は大丈夫だろう。 「ごめんね卯月ちゃん、一人にしちゃって」 心残りは彼女を残してこの世を去ることである。心配であり、ただ単純に彼女のことが心配である。 南ことりの殺害現場を見せたこと、不可抗力とは云え一般市民には辛い現実を体感させてしまった。 錯乱状態に陥った人間の果ては由比ヶ浜結衣の一件で卯月も感じ取れただろう。 悪は例え善人の心であろうと、蝕んでしまい、負けた者は心ごと悪へ変化してしまう。 「負けないでね卯月ちゃん……自分を見失わないで」 だから彼女には最期まで自分の意思を貫き通して欲しい。 他人の言葉を借りる訳でもなく、依存することでもなく、自分の意見を通せる意思を。 「ふふ……ブラッドレイの時に死を覚悟してたから涙が出ないや」 これから死を迎えるのに何故か涙が出て来ない。 嘗てキング・ブラッドレイに敗戦を喫した時は死を実感しこれまでの出来事が脳内に響いた。 待ち受ける死の恐怖に怯えていたあの時に己の覚悟は既に完了していたらしい。 「仇、取ってからそっちに行きますね」 友であるクロメを殺したキンブリーを道連れに天へと昇る。 マスタングに聞いた所、ブラッドレイとキンブリーは同じ世界の人間らしい。 あの世界の人間に掻き回された事、一生癒やすことの出来ない敗北の思い出になってしまう。 「まだ会場には沢山の悪が居る……皆、頼みましたよ」 高坂勢力を始めとする悪が会場にはまだ蔓延っている。 ウェイブやエスデス、サリア達にはその身を削ってでも正義の意思を継いでもらいたい。 「そう言えばほむらちゃんには悪いことしちゃった」 マスタング達に遅れて承太郎を追い掛けた時。 セリューは残ってほむらの支給品を漁り、彼女と鹿目まどかの首を切り落として首輪を回収していた。 物は全部マスタングのバッグに収納したが……正義のためとは云え、悪いことをしてしまった自覚はあるようだ。 「もうそろそろ、かな」 己の世界が終わりを告げる時がまもなく訪れる。 「私がこの手で断罪したのは南ことりと由比ヶ浜結衣……ちゃんだけか」 蓋を開ければ全く悪を断罪出来ていない自分が情けない。せめてもの救いがキンブリーだろうか。 それに由比ヶ浜結衣は出会いが違えば、南ことりだって手を共に繋げる答えがあったかもしれない。 「でも、そんなことを一つでも認めれば……揺らいでしまう」 正義の味方にとって悪は断罪する対象である。 その定義が揺らいでしまえば、己の感覚が鈍り、甘くなり、己を滅ぼすこととなる。 その断罪全てに関わっているのが島村卯月である。 やはり、知らない間ではあるがセリュー・ユビキタスにとって島村卯月の存在は無くてはならない。 「本当にごめんね卯月ちゃん……私は此処でお別れ。でも、絶対に追い掛けちゃダメ、だからね」 此処に来て涙が浮かんでしまう。 正義の味方故に最期までかっこ良く散りたかったが自分も人間であるようだ。 残された者の悲しみをセリューは知っている。 両親のように、オーガのように、Dr.スタイリッシュのように。 そして、終わりの時が訪れる。 「――――――――――コロ?」 誰も傍に居ないかと思えば、瀕死の身体を引き摺ってコロが近くに寄り添った。 キンブリーの爆発を、空条承太郎のラッシュから自分を守ってくれたためにその身体は回復が追いついていない。 「ごめんねコロ……ずっと一緒に居てくれてありがとう」 出会ったから一緒に居てくれた存在がコロである。 生物帝具ではあるが家族同然の存在であり、殺し合いでも早くに合流出来て安堵していた。 皆が離れてもコロだけは離れることが無かった。正真正銘の家族であり相棒。 最期にコロが来てくれたお陰で安堵したのか、更に涙が溢れてしまう。 死にたくない、誰もがそう思う。けれど、誰もが、抗えない。 コロを抱き寄せる。 その表情は悪を断罪する時の険しい表情では無く、優しくて女性らしい笑顔で。 「――――――――――――ねぇ、コロ」 そして本当に終わりを告げる針が響く。 最期には似合わない、星の輝きを冠する笑顔で。 「私はちゃんと正義の味方だったかな」 【空条承太郎@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース 死亡】 【セリュー・ユビキタス@アカメが斬る! 死亡】 彷徨いの果てに辿り着いたベッドに己の身体を全て託すように眠る。 セリュー・ユビキタス最期の爆発に対し紅蓮の錬金術師は賭けに出た。 手持ちにあった流星の欠片を賢者の石と同じように扱い、己の錬成への糧として使用した。 それでも爆発を防げるか怪しい段階ではあったが、生きている自分が答えである。 しかし全身は更に火傷を覆い、立っているだけでも限界な身体は簡単に気を失ってしまった。 全ての骸を失ったキンブリー。 その生命を潰すことは出来ずとも、正義の味方の一撃は確かに届いていた。 【D-7・民宿/1日目/午後】 ※D-7は民宿以外崩壞しました。 【ゾルフ・J・キンブリー@鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST】 [状態]:疲労(大)、精神的疲労(小)、全身に火傷(大)、右頬骨折、全身に痛み(絶大)、上半身裸 [装備]:承太郎が旅の道中に捨てたシケモク@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダーズ [道具]:ディパック×2 基本支給品×2 、死者行軍八房@アカメが斬る!、イギーの首輪、クロメの首輪、空条承太郎の首輪 [思考] 基本:美学に従い皆殺し。 1:傷を癒やす。 2:ウェイブと大佐と黒子は次に出会ったら殺す。 3:少女(婚合光子)を探し出し殺す 4:首輪の解析も進めておきたい。 5:首輪の予備サンプルも探す。 6:余裕があれば研究所と地獄門を目指す。 7:武器庫で首輪交換制度を試す。 [備考] ※参戦時期は死後。 ※千枝、ヒルダと情報交換しました 時系列順に読む Back 見えない悪意 Next これから正義の話をしよう 投下順に読む Back PSI-missing Next 自由の刑 128 Inevitabilis 空条承太郎 GAME OVER セリュー・ユビキタス GAME OVER 島村卯月 139 これから正義の話をしよう ロイ・マスタング 本田未央 131 奈落の一方通行 ゾルフ・J・キンブリー 145 かわいい破滅
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彼・彼女たちはなぜ歌うのか? それぞれの理由を追究していきたい。 便宜上タイトルはアニメキャラとしたが、アニメだけに限らず、ゲーム、コミックス、ノベルスその他のキャラクターについても扱うこととする。